地獄の業火に焼かれながら、それでも天国に憧れる。

アニメ金田一少年の事件簿の「オペラ座館殺人事件」というエピソードの中で、月島冬子という少女が自ら命を断つ前に遺した言葉をタイトルに拝借した。

演劇部に所属しており、舞台「オペラ座の怪人」のヒロイン、クリスティーヌ役に抜擢されるくらい美しく優秀だった彼女は、同じ演劇部のメンバーから嫉妬され嫌がらせを受けてしまう。その結果、彼女は顔に酷い怪我を負い、美しかった顔は二度と元には戻らない程のダメージを受けてしまう。加害者の言い分ではちょっと脅かしてやるだけのつもりだったらしいが、不幸なことに最悪の結果になってしまったということらしい。冬子は加害者たちを訴えることはしなかったが、それを良いことに加害者たちがちっとも反省してなかったことを知ってしまう。彼女が死を選んだ理由は、一度は許した加害者たちに対する恨みの気持ちで、自分の心が醜く変わってしまう前に美しい心のままで終わりたいという理由からだった。「地獄の業火に焼かれながら、それでも天国に憧れる。」というオペラ座の怪人ファントムの台詞と共に彼女は病院の屋上から身を投げた。

美しい心のままで終わりたかったという冬子。普通の人間だったら加害者を恨み寧ろ復讐に走ってもおかしくはないというのに、冬子はどこまでも美しい心の持ち主だったのだ。金田一少年のエピソードの中でも忘れ難い話の一つだ。

最近みたネットニュースで、タレントの壇蜜さんがこのように言っていたのにも非常に共感した。下記に引用させていただく。

「いま思う、自分の中で一番怖くなること。それは『年を重ねて感謝や謙虚の気持ちより先に、誰かのせいにしたり、みだりに権利ばかりを主張してしまう意地悪人間』に変身してしまうことです」と打ち明け「いきなり変身するのではなく、じわじわとなっていくんじゃないかと想像するととても怖い」

わかりすぎるくらいわかるその気持ち。歳をとると余裕が生まれてくると思いきや実際は寧ろその逆で…。今は自制できていてもそのうち自己中心モンスターになってしまうのではと憂いている。どうすれば冬子のように美しい心のままで逝けるのか答えは出ぬまま夜は更けるのであった。

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