映画のはなし:『素晴らしき映画音楽たち』
映画音楽好きとして、常々「ジョン・ウィリアムズ、マジで神!!」と思っているんですけど、映画音楽の素晴らしさを改めて痛感するドキュメンタリーが本作。
名作と名曲がセットなのは大事なセオリー。
作品の内容云々関係なく、映画館で聴くと無条件に感動で鳥肌が立つ音楽ってたくさんある。
私の中では『スター・ウォーズ』、『インディ・ジョーンズ』、『ジュラシック・パーク』は、音楽だけでも一気にテンションあがる不動の作品。
ほかにも、映画館で音楽を聴くだけで感動する映画は、そりゃもう書ききれないくらいありますが。
パッと思いついたのは『マグニフィセント・セブン』。ラストで『荒野の七人』のメインテーマが流れた瞬間に、きたーーーーー!と思ってトリハダ(本編中、ずっと頭の片隅で「あの曲聞けないのかなぁ……」と思っていたので)。
というわけで、『素晴らしき映画音楽たち』。
原題は『score』。
監督のマット・シュレーダーはもともとジャーナリストだったけど、映画音楽に関する映画が観たい!と映画会社に持ちかけたけどなかなか実現しなかったということで、なんと御自ら仕事を辞め本作の監督と脚本を担当した、という熱意の持ち主。
そんな人がインタビュアーとして話を聞いてくれるドキュメンタリー、つまらないわけがない!
製作総指揮として、日本の戸田信子さんの名前もクレジットされています。戸田さんは映画音楽を専門にしたオーケストラ、フィルム・スコア・フィルハーモニー・オーケストラの代表であり、「メタルギア・ソリッド」シリーズや「攻殻機動隊 SAC_2045」の音楽も担当されている方。
「映画音楽」なので、もちろん作曲家のインタビューがメインなのですが、作曲家のほかにも、オーケストレーター(曲をもとにオケ譜を描き起こす人)、心理学者、映画評論家や映画史のスペシャリスト、スタジオミュージシャンなどなどさまざまな専門家が登場。各専門分野で「映画音楽」を語ったり、分析したり。
そして本作、名曲が流れている映画本編もインサートされてるわけです。
ということは、映画の名シーンおいしいとこどり作品なのです!!
何より、出てくる作曲家が豪華!!
もう、なにこのオールスター大集合!ってくらい豪華!
ジョン・ウィリアムズ(『スター・ウォーズ』、『ジョーズ』、『インディ・ジョーンズ』、『ジュラシック・パーク』、『ハリー・ポッター』)
ハンス・ジマー(『ライオン・キング』、『グラディエーター』、『パイレーツ・オブ・カリビアン』)
は他と比べようがないバケモノ作曲家として、他にも
トーマス・ニューマン(『セント・オブ・ウーマン』、『007/スカイフォール』、『ウォーリー』)
ダニー・エルフマン(『バットマン』、『シザーハンズ』、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』)
タイラー・ベイツ(『300』、『ジョン・ウィック』、『デッドプール2』)
アレクサンドル・デスプラ(『グランド・ブダペスト・ホテル』、『シェイプ・オブ・ウォーター』)
などなど。書ききれないほどに名作に携わった作曲家や関係者が登場するのです。
そしてスタジオオーケストラによるサウンドトラックの録音風景だったり(ほぼ初見で録音らしい。すごっっ!!)、作曲家自身も「まだ仕事が終わってないのに映画公開の看板を街で見かけるようになると焦る」みたいな言葉があったり、みんなギリギリで仕事してるのね。っていうか私、そんなプレッシャー耐えられない!こわいこわい!!と他人事ながら怯えたり。
ジョン・ウィリアムズのインタビュー映像はないのですが、スピルバーグ監督と『E.T.』のテーマについて相談している映像など、「ほえ~こんなんだったんだ~」と思うシーンもたくさん。
若き巨匠たちがまだ映画音楽家になる前の映像なんかもあったりして、歴史を感じることもできます。
たぶん、貴重映像。
そして現在の名作曲家たちも「ジョン・ウィリアムズは神」って話すのを見て、なぜかちょっと安心することも。
ハンス・ジマーが依頼された仕事のプレッシャーを感じて「ジョン・ウィリアムズに頼んでくれ!って思う」なんて巨匠ギャグかましてきたりするし。
この世でそんなこと言えるの、ハンス・ジマーだけだよ!
とにかく、この作品に関わっている人全員が映画音楽を心から愛していることが伝わってくる。それって、ドキュメンタリー作品でいちばん大切なこと。
心理学者の方の
「映画音楽の作曲家は特別な感性を持っている。それと作品が組み合わさることで映画音楽にパワフルで不思議な力が与えられる。きっとだからこそ科学では計り知れない」
というコメントがあって、本当にその通りだなと感じた。映像と音楽が融合することで何倍も感動するし、切なくなるし、ワクワクする。そして心理学者に「科学では計り知れない」と言わせる熱量が生まれる。
エンドクレジット後に表示される
「音楽の力を開拓し続ける作曲家、演奏者、プロデューサー、スタジオ、編曲者、オーケストレーター、ミキサー、エンジニアに捧ぐ」
の文字。
こういう普段表に出ることのない方々のリスペクト、個人的にめちゃくちゃグッときます。
これだけ巨匠が出てきて、どの作曲家がこの作品を締めるんだろう、と思っていたけど、文句ないラストだった。