映画のはなし:まだ終わっていない『MINAMATA-ミナマタ-』
GW中に観た『MINAMATA-ミナマタ-』。
10年くらい前はジョニー・デップが好きすぎて来日のたびにレッドカーペットにせっせと応募したりしていたのですが、ヴァネッサと別れたあたりから興味も薄くなり……めっきり新作を追いかけなくなったので(最近復帰したけど、それまではDV裁判で新作もなかったし)、ようやく観た作品のひとつ。
2020年の作品だけど、当時もジョニデの泥沼状況もあったりして配給会社が「公開しませんわ」とかひと悶着ありましたね。
もちろん映画なので、ドラマティックに脚色されている部分もあると思うし、この映画で描かれていることがすべてではないはず。でも、知らないことがたくさんあった。
グラフ雑誌「LIFE」に掲載された写真からジャーナリストとして著名になったユージン・スミス。しかし現在はアルコールに溺れ、LIFE誌の編集長からも厄介者扱いされている。ある日、スミスの元に仕事のコーディネーターとして訪れた日本人女性アイリーンから「水俣病の現実を写真に収めてほしい」と依頼された。
現地を訪れたスミスは、株式会社チッソが引き起こした産業公害の真実を伝えるため、表に出ることを恐れる被害者からの信頼を得て、自信も危険ななかに身を置きながら、世の中に水俣病の真実を伝える写真を発表する。
作中にも出てくる、ユージン・スミスが水俣で撮影した写真「入浴する智子と母」を実は見たことがなかったのですが、一緒に観ていた母が「この写真、発表されたときに見た。確か週刊朝日か何かで見た気がする」と言っていました。映画を観終わってからいろいろ調べて、この写真はしばらく封印されていたらしいけど、この作品で数十年ぶりに解禁されたようですね。
水銀により、胎児性水俣病になってしまった娘を抱きかかえながら入浴する母子の写真。すごく胸を打つ写真だけど、調べていて「ミケランジェロのピエタのようだ」というテキストがあって、ストンとハラ落ちした。確かにその通りだな、と思う。
この映画を観て、私は知識としてしか水俣病を知らなかったんだな、と改めて感じました。事件当時を知る母は、「電車に乗ってると、東京のチッソの会社が窓から見えた。会社の入り口が金網で保護されていて、社員が会社に入っていく姿が収容所に入るみたいって思った」と言っていた。
もちろん、有害であることを分かっているのに汚染された工場排水を海や河に排出したことが最大悪であって、被害に遭われた方に(お金で解決できるものではないけど)贖罪も込めて十分な保障をすべきことに間違いはないけど、大会社であったチッソの社員の中にも、良心の呵責に苛まれていた人もいたのかもしれない。いろいろな事情があって、口を閉ざさざるを得ない人もいたのかもしれない。
裁判で勝訴を勝ち取ったことはひとつの区切りにはなっているのかもしれないけど、まだまだ公害被害は終わってない、ということを改めて突き付けられた。
そして、ジョニデを筆頭に、脇を固める俳優がすごくよかった。やっぱり上手い役者が揃ってる映画って良いですね。