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週末お遍路さん(51):いざ!予約困難な遍路宿「民宿岡田」へ
66番札所・雲辺寺さんを堪能した我ら。次に向かうべきは雲辺寺より北に位置する67番札所・大興寺さんなのですが、我らが向かうのは南。
なぜ次の札所から離れるのか?
それは、どのお遍路さんも「泊まれるなら泊ったほうがいい!」とおすすめする「民宿岡田」に泊まるから!!
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今回のOちゃんとのふたりお遍路さんの宿探しで、「ま、ダメもとで電話してみるか」とご連絡したら、なんと予約が取れたのです。
さすが、お遍路さんオフシーズンの真夏!
民宿岡田さんは、雲辺寺さんに向かうのにいちばん近いお宿。なので、予約のお電話をした際、
「当日、到着何時ごろになりそうですか?」
「17:00前には到着したいと思っています」
「翌日は雲辺寺でしょ?」
「あ、いや、お宿に行く前に雲辺寺さんは終わらせる予定で……」
「え?雲辺寺のあとうち来るの??」
という会話がありました。
そらそうだ。戻ることになりますけど!って思うよね。
でも、戻ることになっても泊まってみたかったの!!!
Oちゃんに運転してもらうくせに、岡田さんなら予約しちゃっていいかな?いいよね!って、私の独断と偏見で予約しちゃったの!
Oちゃんに「実は民宿岡田さんが予約できたのですが……」と連絡したら、「問題ない!行きたい!泊まれるなら行く!」と言ってくれたし、先輩も「うらやま!行きたかったー!」と言ってくれたし(わたしのドタキャン回に泊まったお宿で「遍路宿希望者は絶対岡田さんに泊まるべき!それくらいのお宿!」とおすすめされたらしい)。
民宿岡田さんは、お遍路さんには超有名なご主人(御年96歳!)と息子さんのお嫁さんが切り盛りされている遍路宿。ちなみに創業60年超。
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とにかくお宿にはお遍路さん関係の資料や写真がところせましとあって、お遍路を歩いた著名人の方も宿泊されたお宿です。
お宿が広いとか設備が充実しているなどのスペック面ではなく、夕食時にご主人が話してくれるお遍路のあれこれだったり、翌日雲辺寺さんに登るお遍路さんには、詳細な道順を説明してくれたり、いろいろお勉強になるお宿なのです。
歩きで雲辺寺さんに行くなら、ここに泊まるのがベスト(標高900mの雲辺寺への道は、お遍路さん泣かせの遍路ころがし)。
そして、お大師さまの化身でもある金剛杖用のちいさなお座布団も用意されている!
そんなん、絶対泊まりたいじゃん!
というわけでお宿に到着すると、お嫁さんが元気にお出迎えしてくれました。
「車よね。お杖使ってる?」
「いや、使ったといえば使ったかも……くらいなんですが……」
「まぁ、でもちゃんと洗いましょうね」
と、ていねいにお杖の先を洗ってくれて、お部屋やお宿の説明をしてくれました(お遍路さんは、お宿に到着したら、まずはお大師さまの分身でもある金剛杖の先を洗ってキレイにするのがルール)。
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お風呂をいただき(ステンレスのすごい懐かしいお風呂!)、夕飯までお外で一服……と思ったら、向かいの縁側に座るご主人が、笑顔で「いらっしゃい」とひと言。
おぉ!これがお遍路さん界隈の超有名ご主人!と、ミーハー心がうずく私。
ちなみに、民宿岡田さんの玄関向かって左側に、お遍路さんたちの伝言板がありました。
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そして宿泊者全員で集まってお夕飯。本日の宿泊客は、私たちと、歩きのお遍路さん(男性)のみ。
お誕生日席にご主人、そのお隣に炊飯器が置かれ、ご飯をよそってくれるのはご主人。
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ご一緒だった方は翌日歩きで雲辺寺さんに行かれるとのことで、ご主人が手書きの地図をもとに、道のりをレクチャー。
ほかには、日本のみならず、今までどんなお遍路さんが泊まられたか、逆打ちの元祖とも言われる、中務茂兵衛さんの話し(石手寺さんにもいらっしゃいましたね、茂兵衛さん)に、この先結願までのお話しなど、いろいろ教えてくれた。
過去に民宿岡田さんに泊まられたお遍路さんの話をしていると「その人はね、この手紙をくれて」とか、すぐに大量の資料のなかからお目当てのものを探し出せるし、96歳とは到底思えないくらい、アタマもしっかり。
すごいわ。すごいよご主人!尊敬!!
いろいろ教えていただきましたが、
「時間も体力もなきゃできないんだから、お遍路をまわれるのは幸せなことだと思って行ってね」
「88番の大窪寺までは女体山を超える人が多いけど、お大師さまが歩いた昔からの遍路道は女体山ルートじゃない」
というのを強烈に覚えています。
今までお話しした先人たちが「最後の女体山越えもキツイよ~」って言ってたから、てっきり推しも山越えしたと思ってたけど、違うんかい!驚愕!
たっぷりご主人のお話しを聞いてお夕飯会も終了。一服してから寝ようかな、と外にいると、お風呂を終えたご主人が戻られるタイミング。どうやら、毎日お風呂上りにキュッと一杯やってから寝るのが日課だそう。
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そして翌朝、お宿の出発前にご主人と記念写真を撮って、「またおいで」と優しく見送ってくださいました。
結構な距離があるのに、いつもお遍路さんが角を曲がって見えなくなるまで見送ってくれるらしい。キュンとしちゃうわぁ……。
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ちなみに、お宿を出る時、お嫁さんに「この辺りってコンビニとかないですよね……?」と聞いたら、「この道まっすぐ行くとすぐファミリーマートあるわよ!」とのことでしたが、我らのスピードでは、まったく「すぐ」には到着しませんでした。
年齢に関係なく車はかっ飛ばす、田舎あるあるですな。