ドラマのはなし:『バイオハザード』から『THE DAYS』へ
なんだかんだ、映画とかオリジナルドラマで新作が出てしまうと見てしまう『バイオハザード』シリーズ。Netflixさんがまた実写ドラマを新しく作っていたのを思い出し、観てしまいました。正直惰性なのよね。「まぁ観ときますか」っていう。
今回、街の名前が「ニューラクーンシティ」だし、どんなもんかしら?と思っていましたが、なんかあんまりゲームとの関連ないのね。
てゆーかウェスカーが!!!!私の知っているクズ野郎ではない!!!
ま、バイオのアニメとか実写版って毎回こんな感じだよね(ミラ・ジョボヴィッチの映画版はあれはあれで別物だし)、という感じ。
またCG長編アニメが出るらしいけど、サブスクに来たら、惰性で観ちゃうんだろうな。
ちなみにこのドラマシリーズは、1シーズンで打ち切りになってしまったらしいですね。
それより、カンヌで男優賞も受賞した役所さん主演の『THE DAYS』がとてもよかったです。
『THE DAYS』は、東日本大震災で起きてしまった、福島第一原子力発電所事故に対処する人たちを描く、Netflixさんのドラマシリーズ。2020年公開の渡辺謙さん主演映画『Fukushima50』も観ましたが、こちらのドラマシリーズのほうが圧倒的に苛酷な現実を描いていると思う。
2時間の映画と全8話のドラマシリーズではもちろん違くて当然だけど、どちらも同じノンフィクションを基に制作された作品です。
『THE DAYS』で素晴らしいなと思ったのは「日本の危機に立ち向かった美談、英雄譚にはしたくなかった」という製作陣からのコメントの通り、状況も、正解も、どうなるかさえも分からない、人間なんて立ち向かう余地もない原子力に翻弄される様は、観ていて「なんでこんな人がこんなポジションにいるんだろう」と憤りを感じることもたくさんあったし(これは映画版でも感じたけど)、作業員の方々が持つ使命感をひしひしと感じました。
大小あれども仕事上のトラブル対応をしている時って、とりあえず時間勝負な部分が大部分を占めるから、当事者としては責任感や使命感なんて感じている暇なんてないけど、第三者的な立ち位置で見ると、やっぱり「どうにかしなければ」という使命感に突き動かされている部分はあるのかもしれないですね。
この事故をアンタの仕事のトラブルと比べるなよ!ですけど。
だけど、原発内に残って原子炉の制御に対処する様子は、映画よりもリアルな映像で描かれていたのではないかな、と想像します。原子力の脅威を一番理解している人たちが、電源を喪失し真っ暗な中、被ばく覚悟で奔走している様子を観ていて、映画を観たときは「こんな状況で対処してくれる方たちがいることには本当に頭が下がる」という気持ちが強かったのですが、ドラマシリーズでは、頭が下がるのはもちろんのこと「彼らの恐怖心はどれほどのものだったのか……」という、恐ろしさと不安に襲われました。
そして本編配信後にYouTubeで公開された、『THE DAYS』の1シーン。
吉田所長が退避命令を伝えるシーンです。
必要最少人数だけを残し、それ以外の所員は退避するということがどういうことかを理解し、うなだれる職員たちの姿は、この数分だけを見ても胸が締め付けられる。
現場で総括していた吉田所長を、映画では渡辺謙さんが、ドラマでは役所広司さんが演じています。それぞれの良さがあると思うし、先に書いた通り、2時間の映画と8話をかけて描くドラマシリーズをそのまま比べるわけにはいかないけど、回を重ねるごとに疲れてやつれていくように見えた役所さんをはじめ、『THE DAYS』の出演陣は素晴らしかったです。
特に音尾くん!チーム・ナックスの役者さんはみんな素晴らしいですね。
役所さんの右腕を演じていたのですが、やるせなさや葛藤を抱えながら、目の前で起きている現実に実直に対処し続ける姿が印象的でした。
『THE DAYS』と見比べたくて、『Fukushima50』も改めて観直したのですが、渡辺謙さんの吉田所長は、感情をむき出しにして刻々と変わる状況に対処し、役所さんが演じた吉田所長は、できる限りトップは冷静に。でも堪えきれない時に感情を爆発させる。
どちらからもものすごいリーダーシップを感じたし、リメイクではない2作品でこういった違いを感じられるのも面白いなぁ、と感じました。
なんか、新しい映画とかドラマの観方をしたな、って感じ。
まだまだ終わっていないし、事故発生当時だけじゃなく、この先もどう対処するのが正しいのか分からないことばかりだと思う。福島第一原子力発電所の近隣がこの先どうなるのかも分からないし、途方もない時間もお金も人出も必要だと思う。電気がないと日本経済や私たちの生活が回らないのは事実だし、原子力発電の是非を含めて考えるべきことは山ほどあって、正解はひとつだけではないとも思います。
ただどんな未来になったとしても、当時現場で対処いただいた方々に対する、感服と敬意は変わらないとも思う。
「未曽有の」なんて言葉じゃまったくもって足りないくらい、苛酷な現場だったと思います。