見出し画像

『母と子のメンタルヘルスケア』

先日、日本産婦人科医会が主催する『母と子のメンタルヘルスケア』という研修に参加してきました。

そこで強調されていることは
母親の妊娠期、産後の健全なメンタルヘルスが子の心身の成長発達に深く影響し、それは次の世代の養育へも受け継がれて行く。

だから、この時期の母親のメンタルヘススをサポートすることはとても重要。

そしてこの時期は誰でもメンタルヘルスが不調になりやすい時期である。

そのとおりだと思います。


研修の事例

うつ病の既往がある女性。
不妊治療で妊娠。
妊娠中から不安が強く、35週で早産し赤ちゃんがNICUに運ばれ母子分離。
その後、母親はメンタル不調が続き中々赤ちゃんに気持ちが向けられず苦しんでいる。
このようなケースにどのような支援をするか。


この事例は25年前の私ととてもよく似ていました。

私の場合は…

仕事で大きなプロジェクトを抱えていたため望んでいない時期の妊娠。
仕事の無理がたたり妊娠5ヶ月から切迫早産になり、3ヶ月間病院のベット上安静。
妊娠経過とともに増える早産予防薬の副作用で食事が出来なくなる。
仕事柄、状況のシビアさがわかっていたので不安はぬぐい切れない。
何とか35週まで妊娠を継続し緊急帝王切開で出産。
赤ちゃんは体重が2,000gに満たず、NICUに収容。


メンタルでは…

産後の回復が悪く母親らしい行動が出来ていない。
自分の子という実感が中々湧かない。
いつまでも我が子が可愛く思えない。
助産師のくせに何やってるんだ。
こんなはずではなかった。
こんな私、母親として失格…

こんな思いがぐるぐる巡ってました。


これは妊娠中からの問題を引きずったまま更に『母子分離による愛着障害』が起こっている状態ですね。
それと、社会的役割(ペルソナ)にこだわり過ぎてただの母親になり切れていなかった。

 
1ヶ月検診で産後のメンタルヘルスをスクリーニングする質問票があります(エジンバラ産後うつ病質問票)。

得点が高いほど危険度が高いと判断しフォローすることになっています。

実は私、凄い高得点でした。
でも、元職場に精神状態がバレるのが恥ずかしくて…
嘘の回答をしました。

 
そのうち持ち直すだろうと心の内を誰にも明かさず全ての事を頑張りました。


すると…
産後4ヶ月頃、マンションの4階のベランダから地面に吸い込まれそうになりました。
その時、抱いていた我が子が泣き出し「はっ!」と我に返りました。

ドラマのワンシーンのようでした。

 
この時期は確かにいつもと違います。
誰もが“魔が差す”危険性があるのです。
 
 
だから、いつもと違う自分を感じたら誰かに話した方が良いです。
人に話すことでもう一人の自分が事態を冷静に見てくれますから。

身近に話せる人が居なかったらこの時期のメンタルヘルスをよくわかっている人に話してみましょう。

 
私達、助産師はそんな母と子のメンタルヘルスについて日々学び、訓練を積んでいます。
 
私もまだまだ未熟ですが…
自分の危なかった体験も踏まえ、未来ある母子に尽力したいと思っています。


でもね、根本は…
母体の心身が健康な時に授かりたい時に授かること。
正常な妊娠分娩経過をたどり母子が一緒にいられること。
産後に孤独にならず無理しすぎない生活を送ること。
 
…かな、と思います。
 

いいなと思ったら応援しよう!