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修学旅行って

舟木一夫さんが歌った「修学旅行~♪」はリアルタイムで見たわけではありません。聞いたわけでもありません。ただ修学旅行という言葉を聞くたびにその歌がなぜか頭の中を駆け巡ります。それも最後の部分だけです。

小学校の修学旅行先は京都・奈良でした。その前の年まで伊勢・志摩だったので、子供心に「やったね!」と思った覚えがあります。しかしそれはそれは楽しみにしていた...と思うんですが、記憶が全然ないのです。泊った旅館が「いろは旅館」という修学旅行専用に近い旅館だったことしか覚えていません。お土産に清水焼の湯飲みを買ったような記憶がかすかに残っています。あれはお皿だったかもしれません。当時の旅行土産定番商品、ペナントを買った男子もいたはずです。無計画な子供はバッグに入らないような大きな楯(多分金閣寺か清水寺が描かれていた)を購入し、バスの隣の座席の子に嫌がられながらも足元にそれを置いて帰っていました。帰宅してどこかに飾ったのでしょうか。
さらに驚くべきことに奈良での記憶が一切残っていないのです。法隆寺や東大寺に行ったはずなんですが。

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さて中学では、なんと、東京・日光に行きました。あこがれの東京。花の都、東京(あれはパリか)。あこがれの東京では、お目当てだった「国会議事堂」見学は改築中だったためバスの窓からその外観を目にしただけです。また日光に行ったものの、いろは坂走行中のバス内ではエチケット袋が必要な生徒が続出でした。手元に残っているのは改築中の国会議事堂の前で撮影した集合写真のみです。数十枚買ったはずなのにとても不思議です。最近見直してみましたが、全然楽しそうじゃなくて逆に笑ってしまいました。心の中がそのまま表情に現れています。

そうして高校の修学旅行がやって来ます。高校では2年生の時に修学旅行に行くと決まっていました。行き先の候補がいくつかあって、生徒が投票したのですが、絶対に得票数が一番少ないはずの「長野」に決まりました。他の候補に「東北」「北海道」「九州」「広島」などがあったはずです。なぜか生徒の得票を無視して「長野」に決まり、修学旅行の準備が始まりました。もちろんバスで行くので「歌集」などを作る修学旅行委員が選出されます。(当然入っていません)さらに当時所属していたバレー部の先輩が言うように「修学旅行用カップル」がにわかにできるのです。それはバスの席で隣に座るとか、一緒に散策するとか、写真を撮るとか、その類のもので、先輩が言うには

「あれ、旅行終わったらすぐに別れるで」

程度のものです。

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この信じがたい現象がわたしのクラスでも起きていました。あの綺麗な女子が、教室の入り口で、同じクラスの男子と親しげに話しています。入り口は2か所あるため、他の生徒はそこを通らず違う入り口を使うというデリカシーを持ち合わせております。

「あそこ、通れないよなあ」

「まあ仕方ないって」

二人の世界に浸ってしまうとあんな感じなのか...。
そんな事を考えつつ、わたしもなぜか同じクラスの男子とカップルになっていました。「ちょっとかっこいいね」と言っただけで伝言ゲームが始まり、あっという間にカップル認定です。これに関してはいろいろ意見を言いたいけれど、まあ自分もその流れに乗りたかった気持ちも大そうあったので、とやかく弁解しません。
しかし修学旅行先の長野県でも善光寺はなぜか改修工事中です。おい、なんでこの時期にこの場所を選んだんだろう。美ヶ原は、秋に行ったため、ひたすら枯れすすきが原が広がっていました。その上、秋が深まりすぎていて紅葉すら終わっていました。

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さらになぜか山登りをさせられることになりました。当時強豪だったバドミントン部の生徒は試合を控えているからという理由でそれをしなくて済んだのに、他の生徒は汗水たらして山道を登った記憶があります。全然楽しくない。そして晩に肌寒いほどの気温の中でお待ちかねのキャンプファイヤーが開催されたのですが、他のクラスはちゃんと音源を持ってきたのに(どんな方法かわからない)、わたしのクラスだけ音源がなく、一人の男子がラジカセを持って焚火を囲んでいるみんなの周りを走り回るという悲惨な状況でメインイベント(自分の中では)のフォークダンスが繰り広げられたのです。まず、定番の「オクラホマミキサー」、そして「マイム、マイム」ですが、なにぶん音源が悪いので良く聞こえません。

「今始まった?」

ざわざわしながら男女がペアでになり火を囲んで踊り始めます。
チャチャラチャチャン、チャチャラチャチャチャチャン♪

https://www.youtube.com/watch?v=rQ_186SjHic


わたしの心の中では、修学旅行用にできた相手ではなく、クラスで一番、いや学年で一番かっこいい野球部のK君と踊りたい!などとワクワクしていたのに、

「はい、マイム、マイム~」

の声が聞こえます。あと少しだったのに、ちぇ、この人と手をつなぐんだなと思うとすっかり気持ちがダウンしました。後で担任の先生が言うには

「あのカセットデッキを持って走ったHは、モテたくてやったんだぞ」

翌日移動する際にようやく修学旅行用のカップルで隣り合わせに座ったものの、そもそも話題がありません。すると遠くの方では、居眠りしている彼女のほっぺに彼氏がキスしたという話が伝ってきて、急いで後ろを見ると、女子は爆睡していて、隣の男子がニヤニヤしています。「あれか」ちょっと期待して居眠りしようと思ったけれど、全然眠くなりません。だって前の晩にしっかり眠ったしなあ。結局無言でバスを降り、リンゴ狩りをしてそのままバスに乗り込みました。
そういうわけで修学旅行に全然いい思い出がありません。思い出どころか思い出すものがないのです。修学旅行は学習の一環なのだからとても大事な行事と言われても何を学習してきたのかと思ってしまいます。

10代で作られた記憶はすぐに消えてしまうし、残っていても自分に都合のいいようにいくらでも頭の中で書き換えられてしまい、その曖昧さを知るのは、卒業後かなり経ってからの同窓会なり、クラス会などでの会話の中からです。ずいぶん後になって、あるクラスでは花札遊びをしていた男子生徒がおり、(なんで花札!)それを担任が黙認していたと聞きました。その先生は生徒から見るとすごく太っ腹(見た目も)だし、規則でがんじがらめにしない大らかさを持ち合わせていたなあと実感します。わたしも花札したかったな。やり方知らないけれど。

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