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運動とエネルギーの関係

1.エネルギーが足りなくなるとどうなる?

身体に蓄えられたエネルギーが枯渇し、食べ物からのエネルギー補給も足りなくなると様々な身体活動が制限されます。初期の症状としては疲労感、眠気、集中力の欠如、めまい、ふらつきなどです。エネルギー不足、低血糖、ガス欠、シャリバテ・・・などと呼ばれます。登山中にこのような症状が表れると、重大な事故につながる可能性もあります。実際に、エネルギー不足が急速な低体温症を引き起こした遭難事故もあります。(トムラウシ山遭難事故報告書

エネルギーは身体を温めるためにもとても重要な働きをするのです。

2.食事からエネルギーを摂取する

食事からエネルギーを摂取するのですが、食事の成分は大きく分けると、糖質、脂質、たんぱく質の3つに分けられます。

まず、糖質とはその分子構造によって、単糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど)、二糖類(麦芽糖、しょ糖、乳糖など)、多糖類(でんぷん、グリコーゲンなど)の3種類に分けられます。糖質は消化分解されると、最終的には単糖類となります。単糖類の中でも、ブドウ糖が主なエネルギー源となります。特に、脳や神経系はブドウ糖のみをエネルギー源としています。糖質は、脂質やタンパク質よりもエネルギーの産生速度が速いことが特徴です。肝臓や筋肉にはグリコーゲンとして蓄えられます。糖質1gで約4kcalのエネルギーが作られます。単糖類は果物、フルーツジュース、はちみつ、砂糖、飴などに含まれ、消化・吸収がとても早いです。一方、多糖類は米、パン、そば、うどん、パスタ、芋類、豆類などに含まれ、消化・吸収がゆっくりです。

次に脂質は、肉や乳製品に含まれる「動物性」と、オリーブ油やごま油、ナッツ類に含まれる「植物性」に分けることができます。脂質1gで約9kcalのエネルギーが作られます。食品で多く摂りすぎると、余った脂質は体内に脂肪として貯えられます。

最後にタンパク質。筋肉、皮膚、髪の毛や爪、臓器、ホルモンや免疫力など、私たちの身体の約20%はタンパク質でできています。タンパク質1gで約4kcalのエネルギーが作られます。タンパク質が不足すると、筋量が減ってしまいます。タンパク質は肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品などに含まれます。

3.運動強度と糖質が枯渇する速度の関係

登山を快適に続けるために最適なペースは、最大心拍数の75%以下、主観的運動強度11〜13以下(キツイと思うよりも遅いペース)だとお伝えしました。それには、糖質のエネルギー産生も関係しています。下の図は、どのくらいの強度で運動をすると、体内の糖質(グリコーゲン)が枯渇するか、を表した図です。120%VO2max=「全力」以上の強度と90% VO2max=ほぼ全力の強度だと約15分間でグリコーゲンは一気に低下してしまいます。それに対して、30%VO2maxや60% VO2maxだと120分間でも低下速度は緩やかです。そして登山に最適だとされる75%VO2maxだと、約90分間で大きく低下しています。

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この図からもわかるように、登山は「全力」の75%以下の速度で歩きながら上手なエネルギー補給を行うことが、筋肉や肝臓に蓄えられている糖質を破壊せずに安全に登山を続けることにつながるのです。

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