太宰治賞・市街地ギャオさん 不思議なメメラブ現象
連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」は、都内近郊までの交通費しか出ない。昨年度はなぜか奇跡的にみなさん都内近郊だったため、自宅に乗り込んで取材できたのだが、今年度はなぜか関東以外の地域の受賞者が続く。
福海隆さんには、上京のタイミングで出版社のカンヅメルームで撮らせていただいた。が、市街地ギャオさんにはしばらく上京タイミングがないという……。
ううむ、悩みどころだ。市街地さんは大阪在住。私の実家は大阪。夏休み帰省で行くっちゃあ行くのだ。ヨシ、私撮影でおうちに上がらせてもらおう!
なぜそんなに人の家に上がり込みたいのだ、と思われるかもしれないが、私はこの連載とは関係なしに、人の家に上がり込むのがとても好きだ。ちょっとした玄関の飾りひとつにも、その人がよく表れていて、その人という舞台をのぞかせてもらっているようで、ワクワクする。
と新幹線に乗った途端、地震が起きて閉じ込められた。
急に東京に置いてきた子どもたちと離れているのが心細くなって、ギャオさんにメールし、上京自体を取りやめることに……。
ギャオさんは、やさしく気づかってくださった。
お土産に持って行ったフルーツパチパチキャンディチョコは溶けた。
日を改めてオンラインでとなり、子どもを寝かしつけた21時半、ワクワクしてパソコンにログインした。
なぜか、私のカメラだけオンにならない。
色々やってみたけれど、結局そのままで取材することになった。
「メメントラブドール」はペルソナがテーマだが、今回の取材で終始、仮面をかぶっていたのは私であった。
取材のあと、ギャオさんから「じつはオンライン取材のとき、『夢みるかかとにご飯つぶ』に合わせたシャツを着てたんです」と写真を送っていただいた。
取材のときは、その人やその本に合わせた格好で。
その私の自己満足な取り組みに「返歌」してくださったのはギャオさんが初めて! とっても嬉しかった。
かくいう私ももちろん、取材は「メメラブ」に合わせた格好で臨んでした。新幹線のリュックの中にはその衣装が入っていたし、21時半のパソコンの前にはお風呂上りなのにその衣装を着ている私がいたのだ。
なのに映らない。なんの因果か映らない。
それもまた面白い気がした。私はどこか「あの連載のインタビュアー」の清を演じて普段は着ない服装を選ぶ。それが誰にも届かないと知った時、その衣装を着ている自分がチグハグで、じゃあ本当の私はどんな格好なんだろうと一瞬足元がぐらついた。これって「メメラブ」っぽい。
さてさて、その衣装の写真で締めようと、さっきからパチパチ平置きで撮影していたのだけれど、今日の東京はどんより曇り空で、どう撮っても映えない。最後の最後までメメラブ現象が起きていたのであった。
※単行本の素敵ピンク装丁に合わせて衣装を練り直せという神の啓示説もあり。
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