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太宰治賞 西村亨さん 死にたい人と死なれた私と

連載「小説家になりたい人が、なった人に聞いてみた。」第四回に登場したのは第39回太宰治賞を「自分以外全員他人」で受賞した西村亨さん。

記事のとおり、彼は死にたい気持ちを抱えながら生きている人だ。
私は取材する前、「死にたい」という彼に、自分は反発を感じるのではないかと予想していた。

私は人に死なれたことがある。
「自死遺族」という言葉はあまりにも字面が苛烈で、まだ使うことができない。自分はそこまでではない、自分にはそぐわない、という気持ちがある。
でも、「死にたい人に反発を感じるかもしれない」という私の気持ちを想像してもらうには、この言葉の苛烈さが役立つだろう。

西村さんの取材を終え、私はあたたかい気持ちでいた。
記事に書いた通り、「こんな生き方もあるんだな」と思った。
同時に、死んだあの人も、こんなふうに生きたのかもな、と思った。きっと私のあたたかい気持ちの原因はそこにあった。

西村さんには友達も家族もいて、その中で淡々と死を願ってた。
不幸な人生ではなく、ただ自分の曲調で自分を生きているという感じがした。あの人も、そうだったのかもな、と思った。

さて、みなさんは、記事中の「自殺を思いとどまった場合にとっておきたい本」がどんなラインナップだったのか気になっているのではないだろうか。

「月と雷」角田光代 書き写し

西村さんは一冊一冊、熱く解説してくれたけれど、それは彼が今後の作家活動で語ることかもしれないので、ここでは写真でお見せするだけにとどめよう。

彼の命を引き留めた本の力に、元出版社社員としても、小説を志す者としても、人に死なれた者としても、ただただ胸打たれていた。



トップ画撮影/武藤奈緒美 


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