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いけばなと経営学はどうつながるのか#1:探究開始

2006年から10年間ハーバードビジネススクール(HBS)で働いていました。とりわけ2008年の金融危機以降、経営学が質的に変容してきていること、そしてその変容に伴い経営学で語られていることと、自分が趣味として続けていたいけばなで大切にされてきたことが重なりつつある、と感じるようになりました。

そして同時にそれは、自分のワークとライフの重なりでもありました。いけばなの世界では永遠のひよっこですが、いけばなをビジネスや経営の世界のど真ん中につなげるということは、自分だからこそできる、自分がこの人生でやることなのではないか、と。

その後2017年に「いけばなの叡智を現代社会(主にビジネス)につなげる」という願いと共にIKERUを立ち上げ。以来、「花をいける」場を個人そして組織向けに展開してきています。

個人向けIKERU@東京(写真:玉利康延)
組織・グループ向けのチームIKERU(写真・玉利康延)
野草をIKERU@軽井沢(写真:玉利康延)


IKERUを主宰し「花をいける」場をいろいろな形でつくりながら、経営学を実践知にするメディアのハーバードビジネスレビューの特任編集委員や企業の社外取締役なども務め、いけばなとビジネスの間をうろうろする日々。ハードな資本主義の現実の前に深い無力感を覚えることもありますが、それでも大きな流れとしては、いけばな、そして東洋的叡智とビジネス・経営学との間の重なり・つながりが濃くなってきているのを感じています。

マインドフルネス、オーセンティシティ(偽りがないこと)。さらには、余白(slack)、引き算、全体性、畏敬(awe)、センスオブワンダーという一見経営学とは関係なさそうな言葉が研究で真正面から扱われるようになっています。そしてこうした考え方はまさにいけばなの中にあります。

「いけばなとビジネスはつながるのではないか」という当初の予感は、自分の中ではもう確信になっています。

とはいえそれは自分の中だけの確信。いけばなの叡智とビジネス・経営学がどうつながっているのか、について、ビジネス・経営学の専門家の方々との対話を通じて深掘りをしながらまとめていくマイプロジェクト、マイプロを立ち上げることにしました。

(写真:本永創太)


このマイプロに関しては、3つの原則を決めています。といっても途中で違うと思えば変えます。今の時点でのゆるい原則です。

第一に、先に道筋やゴールを決めず、その都度の発見や心のわくわくに導かれて進む、ということ。

いけばなとは人が花をいかす営みであって、主体は花です。今手の中にある花がどうやったらいきるかにただただ注意を払う。それを続けていくと、自ずと全体の調和やバランスが立ち現れる。一方、こういうふうにいけようというビジョンを先に決めると、その頭の中のビジョン、つまり人間の思いが優位となり、手の中にある花はそのビジョンの実現のために使われる、という人間主体の行為になります。

このプロジェクトで言えば、最終的に本にするためにやる、とか、ウェブ連載にする、とか、経営学のこんな部分に当てはまりそうだなとあらかじめ見当をつける、とか、そういうことをやらない、ということです。

どうなるかわからない、見えないのは不安だけれど、でも今ここの一歩を丁寧に歩けば必ず道はできる、という何か大きな流れを信じる。信じてその流れに身を任せる。いけばなという限られた枠組みの中ではいつも心がけている(そして不安が勝ってできない時も多々ある)ことを、このプロジェクトでも実践していきたいと思っています。

第二は、探究の際には、共感と同時に違和感も大切にする、です。今までのところは正直言って、経営学の論文や記事を読んでいても、いけばなと共鳴するところだけ、自分が共感するところだけに反応して、「その通り!」と膝を打つ、といった感じでした。いけばなと経営学が重なる、それが見たいあまりに、見たいものしか見ていなかった。

なんかざわざわする、という違和感は、何か自分のこれまでの思考や経験からはずれている、でもどうにも気になっている、何かがそこにある、というサインです。自分のそうした反応により敏感になり、ざわざわを感じたら一度きちんと立ち止まって、なぜ自分が違和感を覚えているのかについて感じ考えていきたい。きっとそれが自分の思考や感覚を広げ深めてくれるガイドになってくれると思っています。

第三は、インプットとアウトプットの両方を大切にする、です。たくさんインプットして、よし、大体わかったぞ、となってからアウトプットするのではなく、インプットをしながらアウトプットしていく。いろんな方と対談したり、本や論文を読んだりしていくと同時に、その時点で、いけばなと経営学のつながりについてわかってきたことや自分が感じていることを書いたり話したりする。そのアウトプットがまた新たな対話や議論、インプットにつながっていく、というゆるやかな循環を意識したい。あと、アウトプットは英語でもしていく予定(希望)です。

次回から、対談の記事や、そこから考えたこと、論文を踏まえた考察などを不定期で発信していきます。

いけばなとビジネス・経営学のつながりについて探究するマイプロ、始まります。


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