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「同じ場所に同じ時間に行ってがんばる」前提からの脱却:オンラインIKERUをやってみます

多くの職場も学校も「だいたい同じ時間に同じ場所にいってそこでみんなでがんばる」ということを前提に動いています。それが自然で何の違和感なくできる人もいれば、きついと感じたり物理的に無理な人もいる。後者の人たちは、その前提がない場所を探したり、つらい気持ちを抱えながら・もしくはつらい気持ちがあることも気付かない状態にして、その前提に自分を合わせていたり。

新型コロナウィルスに感染しない・させないためになるべく外に出ないで、という昨今の状況になると、それを前提としていない、それがきつい・無理な人に開かれた思想・設計の場が、一気にその強さを発揮しているように見えます。学校であれば、基本オンラインで学ぶN高、ホームスクーリングなど。職場であれば、育児・介護・自身の病気を抱えるなど時間的制限が大きい方々もそれぞれのペースで働けるようにしてきた企業。

こうした学校・企業にとっては、そうでないところにとっての非日常が日常ですので、そのまま通常運転をすればいいだけの話になります。さらには、一斉休校にあわせてN高はコンテンツを無料公開、など、そのノウハウやコンテンツを広く公開してくれてもいます。

自分自身は、組織にフルタイムで所属して働いていた時から、違う組織で兼務をしたり、集中したい時は家で書きまーす、とかいって「その時間その場所にいないで働く」自由を勝手に味わっていました。その後独立してからは、有給も福利厚生も企業による保険負担も一切ない代わりに、いつどこで仕事をするかはもちろん、何を「仕事」と定義するのかまで、全てが自由です。

といいながら、個人の方が「花をいける」という行為と時間を楽しんでもらえるように、と思って3年前に始めた個人向けIKERUレッスンは、リアルで時間を最初から最後まで共有する場づくりにこだわっていました。各自が一層集中できるように、互いに学び合えるように、という願いで、同じ場所に集まってもらい始まりと終わりの時間を揃えていました。まさに「だいたい同じ時間に同じ場所にいってそこでみんなでがんばる」です。

遠方にお住まいの方の「来たいけれどなかなか来れない」という声、アメリカに住んでいるので年に一度の帰国時に家族で来てくれる人、家族や仕事で何かあってレッスン直前での涙をのんだキャンセル...いろいろサインはありながら、「IKERUは同じ時間同じ場所でやるからこそ」という思い込みがあり、そういうサインをちゃんと受け止めていませんでした。

でも二つのことが起こりました。まず、そもそも自分がリアルな場で人前にたって話をしたり場をリードすることにドクターストップがかかり、個人向けIKERUレッスンや組織向けのIKERUワークショップをしばらく休止することに。これまでのやり方では個人向けIKERUはできなくなっています。

もう一つが、新型コロナウィルスを受けて、急速にオンライン化が進んでいること。そして心がざわざわしながら家にいる時間が長くなる中で、花をいけると心がすーっと落ち着き、いけばなの素晴らしさを再認識したことです。

「花をいける」という行為自体は、今ここにいてやる、非常に身体的なものです。リアルな花を触り、その香りや流れを感じ、剣山にぐっと花をさし、作品のバランスを目だけでなく身体で感じる、というのはVRやARの技術を使ってもできないことです。

もちろん様々な技術が進めば「花をきれいにいける」ことは機械にできるようになるかもしれませんが(現在放映中の仮面ライダー01でもでてきました)、「身体を通じて感じ経験する」のは人間だからこそ。かつ「花をきれいにいける」という目的のために向かうのではなく、「花をいける、それ自体を楽しむ」という無目的な行為も人間だからこそやることです。

でもIKERUの場はオンライン化してできることもあるのではないか。それぞれがリアルにいけた上で、でもいける時間もいける場所も自由にしてみたらどうだろうか。

私が活動休止をしている間、IKERUのメンバーが自主的に「IKERU部」を立ち上げ、月一度の自主練をやっています。私よりもはるかに場作り・学びの場の設計のプロたちがいるため、新しいIKERUの形がすでに2ヶ月にして立ち現れてきています。それなりの人数が集まることもあり、3月の自主練は延期、ということになったのを聞いて、ならばもともと予定していた日を含めた金曜日から日曜日までの間に、「オンラインIKERU」をやってみよう、と思いつきました。

決められた3日間のどこか、自分の都合のよい時間で、近所かオンラインの花屋さんでお花を買って、自分の場所でいける。いけたら、その写真をオンラインにアップ(実際にはFacebookのイベントページを使います)、その写真に対して私が手直しの提案も含めたコメントをして、また互いにコメントし合い、各自手直しをして再度写真をアップ。そして感想や気づきをこれもページ上で共有し合う。

以前の形だと私の時間と場所の制約があって、開催回数と人数も限られていたのが、これにすれば頻度を上げられて人数の制約もないので、「花をいける」をより多くの方々の日常により染み込ませていくことにつながるかもしれません。何より、この形だとIKERUを私が続けることができるし、私もいける一人のメンバーとして参加するので、IKERUのコミュニティのみなさんと「いけばなの叡智を共に探求する」を実践できます。

ただ、オンラインIKERUに参加するには、一度でもいいからリアルな場のIKERUに参加したことがある、というのが条件で、リアルな場で密度濃くやってきたからこそできるオンラインの場創りです。

私は「いけばなを教える」先生ではなく、「花をいける、花をいかすを楽しんでもらって、日常に入れていってもらう」ファシリテーターだというスタンスで活動しているので、YouTubeでいけばなオンライン講義をする、というのはないと思っています。となると、初めての方にIKERUをオンラインでやってもらう、ということについては、まだいいアイディアがありません。

例え、スターウォーズのような3次元コミュニケーション技術があっても、お花と花器と剣山というリアルなものが必要なので、その調達については各自やってもらわなければならず、そこにはある程度の経験や感覚、あとは買うことへのコミットメントがいる。となると、やっぱり最初はリアルな場で見てもらい経験してもらわないと始まらないのかもしれない....

少しずつ今思いついている形でオンラインIKERUを走らせながら、本当にリアルでしかできないことは何か、オンラインだからこそできることは何か、についての精度を高めていきたいと思っています。

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