エッセイ『ヨックモックのシガール』
異動の季節になると、箱入りのお菓子を胸に抱え、挨拶まわりをする人が次から次へとやってくる。
以前、勤めていた職場は部署人数が多く、気がつくとデスクのうえにはお菓子がいっぱい、という状態になることがこの時期よくあった。そのとき、何を持ってまわるのかはわりとセンスが問われるところで、ときたま個装されていない当日賞味期限のお菓子を持ってきた人が、「忙しくて、いま食べていられないよ」とひんしゅくを買っている姿を目撃したこともあった(ひどい反応だけれど)。
そうしたなかでヨックモックは、圧倒的安定感があったように思う。
ヨックモックのシガールやクッキーを詰め合わせたお菓子缶を抱えて挨拶まわりをする人は多く、大抵はそれを見ると、みんな小さな歓声をあげて、どれにしようかな、と嬉しそうに選んでしまう。なかでもシガールは人気で、さまざまな焼き菓子が入っているなか、最初にシガールを選ぶ人が多く見受けられた。たぶん、みんな知っていたのだと思う。それが確実においしいものである、と。
シガールの良いところは、わたしが言うまでもなく、子供から大人まで楽しめるバターの風味豊かな軽やかな食感のクッキーで、あの葉巻状になっているデザインがなんとも魅力的でそそられる。子供のちょっとしたおやつにも良いし、お客さまが来たときのお茶請けとしても良いし、どんな場面においても適応できる優れものだな、と思うのだ。上品なのに素朴で優しい、というのは人間同様、まさに愛される所以だろう。
とりわけわたしのまわりでは当時、シガール支持率が非常に高く、いっときは「シガールをくれる人に悪い人はいない」説まで飛び出したほどだった(!)。真偽のほどは定かではないけれど、シガールはそのくらい信頼できるお菓子として受け入れられている、というのは多分、わたしのまわりだけに限った話ではなさそうだ。
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