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創作怪談 「不思議な日記帳 前編」

  玲奈は28歳の会社員だ。
毎日、仕事と家の往復をするだけの平凡な日々を送っていた。
特に変わったこともない生活。
彼女には幼い頃から続けている一つの大切な習慣があった。
それは、毎晩日記をつけることだった。
玲奈は一日の終わりに、その日起こった出来事や、感じたことを、事細かに記録している。
玲奈にとって、日記を書くことは、ストレス発散にもなるし、自分自身を振り返ることができる大事な時間だった。

  ある日の夜、玲奈はいつものように仕事を終え、帰宅してから適当に夕飯を作り食べて、湯船にゆっくり浸かりリラックスした後、お気に入りのお茶を淹れて、日記を書こうと机に向かった。
しかし、日記帳がいつもの引き出しにないことに気づいた。部屋中を探しても見つからない。
「あれ?どこだろう……」
昨日、確実にこの引き出しにしまったのに……泥棒?最初にそう思った。
印鑑や通帳などをしまっている引き出しを開けるが、取られてはいないようだ。
他にも無くなったものはない。
日記帳だけ盗んだというのも考えにくい。
  そういえば、今日がゴミ出しの日なのを思い出し、昨日、日記を書いた後にゴミをまとめた。
焦ってまとめたせいで日記帳までゴミに出してしまったのかもしれない。
そう思うことにした。
無くし物はだいたい諦めたら出てくるものだ、数日で出てくるかもしれない。
その日はメモ帳に一日の出来事を書くことにした。日記を書くことは彼女の日常の一部であり、どうしても、それを欠かすことはできなかった。

  翌日、玲奈は仕事の帰りに新しい日記帳を買いに行った。
その夜、帰宅しすぐに新しい日記帳にその日の出来事を記録し始める。
昨日の日記代わりのメモは日記帳の一番最初のページに貼り付け、その日の日記は、いつものようにしっかりと記録していく。
しかし、どこか心が落ち着かない。
無くなった日記帳のことが頭から離れないからかもしれない。
とはいえ、新しい日記帳は以前から気になっていたものだったし、少しワクワクした気持ちで日記を書いた。 

  その日、玲奈は不思議な夢を見た。
夢の中で、彼女は無くしてしまった日記帳に何かを懸命に書いていた。
後ろからその様子を眺めているような視点で夢を見ていた。
日記帳を覗き込むと、自分の知らない出来事を詳細に夢の中の彼女が書いている。
  夢から覚めた時、玲奈は冷や汗をかいていた。
なぜなのかは分からない。
日記を書いている自分を俯瞰で見ていただけなのに……

  その夢を見た日、玲奈が仕事から帰宅すると、机の上には消えたはずの日記帳がぽつんと置いてあった。
もちろん今朝家を出た時にはなかった。
玲奈は一瞬立ちすくむ。
驚きと恐怖が交錯し、脈打つのがわかった。
意を決して日記帳を手に取りページをめくる。
間違いなく自分が日々を綴っていた日記だった。
しかし、最終ページをめくると見覚えのない文章が書かれている。

「これを読んでいるあなたは誰?」

鳥肌が立った。
恐怖しながらも確認してみるが、玲奈の筆跡だ。
間違えようのない癖が見て取れる。
玲奈はその日記帳を収納の奥へとしまい込んだ。 

 続きが出来ました。↓


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