創作怪談 『鏡の向こう』
翔太はベッドに寝ながらスマホを弄っていた。
ココ最近は最近はよく夜更かしをしている。
その日も、夜更かしをするつもりは無かったのだが、動画を見ていたらいつの間にか、夜中になっていた。
そろそろ寝るかと寝返りを打った時、姿見が目に入った。
鏡の中の自分と目が合う。
普段と変わらないので特に気にも止めず、目を閉じた。
その日は、友達と通話をしながらゲームをしていた。深夜の2時ぐらいになって、友達が眠いと言い出したので、ゲームを切り上げ、ベッドに入る。
とは言っても、普段よりも早い時間だったこともあり、なかなか寝付けない。
寝返りを打ち、姿見が目に入った。
鏡の中の自分が見えた。
何となく鏡の中の自分の姿に違和感があり、じっと見つめる。
細かく見ても、どこがおかしいのか分からない。気のせいかと寝返りを打って、姿見から目を離した。
次の日は漫画を読みながら夜更かしをしていた。ベッドに寝ながら読んでいたのだが、ふと漫画から視線を外した時に、姿見が目に入る。
今日も違和感がある。
鏡の中の自分自身の姿がどこが微妙に違う気がする。
なんだろう、そう思って起き上がる。
そこで、違和感の正体に気がついた。
鏡の中の自分の動きが少し遅い。
動きにラグがあるというか、動きを真似をされているかのような、そんな感じがする。
身の毛がよだつ。
気のせいだろうとは思うが、なんだか嫌な気分になって、目を逸らした。
目を逸らす瞬間、鏡の中の自分が、不気味に笑っている姿が、見えた気がした。
驚き姿見に視線を戻すが、そこに居たのは驚いた顔の自分自身だった。
流石に、気のせいだなと思いながらも、少しだけ不安な気持ちになり、タオルケットを手に取り鏡の前に立つ。これで覆ってしまってら鏡面が目に入らないようにしよう。翔太はそう考えた。
今、鏡に映る姿は、特に違和感なく、普通だ。
鏡を触ってみようと手を伸ばす。
触れた瞬間
ズっ……と鏡に引きずり込まれるかのような感覚がした。
急いで鏡から手を離す。
鏡の中の自分自身は、手を引いたポーズのまま、驚いた顔をしている。
怖くなり慌てて、タオルケットを被せ、姿見を覆う。
そのまま数日過ごしていたのだか、ある日、珍しく夜更かしもせず、寝ていた翔太はハッと目を覚ました。
なんだか嫌な夢を見ていた気がする。
もう一度寝ようと、目を閉じてごろりと寝返りを打った。
……視線を感じる。
ありえないことなのだが、じっとりと睨め付けられているかのような、そんな視線が向けられているような気がした。
翔太は目を開けた。
そこには、タオルケットを被せた姿見があった。
端の方のタオルケットが不自然に少しだけめくれて、隙間から少しだけ鏡面が見えていた。
その鏡面には。じっとこちらを見つめる目が映っていた。
その目と、目が合うと、めくれていたタオルケットがサッと元に戻り、タオルケットに鏡面は覆われ、見えなくなった。
翔太はまた寝返りを打ち、目を閉じる。
気のせいだ。
気のせい……
そんなことを考えていたが、またあの嫌な視線を感じる。
気のせいだ……
心の中で何度もそう呟きながら、翔太はいつの間にか眠っていた。
翌朝、翔太は起きてすぐに姿見を押し入れの中にしまい込んだ。