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Patient Experience(患者経験価値)Vol.03

日本におけるPXの取り組み

さて、移り変わりの激しい医療業界で注目されつつあるPXですが、実は日本にも「(一般社団)日本PX研究会」という団体があり、メンバーの方々は国内におけるPXの推進に尽力されています。
PX研究会はイギリス(NHS)を基に日本版のサーベイを開発するなど、現在は国内の様々な病院に普及を進めながら、具体的な運用やコーチングについて施策を考えられているところです。


日本は世界的に見て、「病院数は多く・医療者は不足」という状況です。
需要と供給のバランスが破綻しているのです。ただでさえ忙しい中、個々の患者のニーズを拾い最適な医療サービスを実現させていくことは簡単なことではありません。


ただし、誰も悪気はないのに患者様を不安にさせたり、傷つけてしまうという事実があるのはもどかしいことです。PXの認知が広がるとともに、医療を取り巻く今日の環境が構造的に変化するよう働きかけなくてはならなりません。


厚生労働省出の白書「保健医療2035」によると、これからの時代に求められるのは画一的な医療(Cure)より、個々人のQOLを重視する医療(Care)と示されています。2035年にピークを迎えるまで、日本の後期高齢者は増えていきます。歳の取り方や最期の看取り方についても、尊厳を保たれたまま快適に過ごす権利が強調されます。

高齢化社会だけでなく、医療者に求めるニーズも国民全体で多様化していると言われています。
そんな中、患者中心性を重視するPXの考え方こそ、理に適っているのではないでしょうか。


従業員満足度(ES)の重要性

PX「患者中心視点」は患者様だけに限ったことなのでしょうか。
実は、PX向上に努める従業員もやりがいや満足を感じる相乗効果が期待できるのです。

この従業員の満足度を、Employee Satisfaction(ES)と言います。
大きくは以下の通り。


 ・患者満足の価値は職員満足にも貢献:患者様から感謝されることで、職員のモチベーションが上がる。
 ・従業員ロイヤリティの向上:PX向上という共通の大きな目的を共有し、達成することで勤続やロイヤリティが上がる。


これまでの常識は、「病院や診療所は治療を受けに来る場所であり、患者様の経験価値や満足度を追求するサービス業ではない」という認識がマジョリティだったかも知れません。


しかし、量より質を追求するこれからの医療サービスでは、
 ①いかに従業員の満足を向上させ、生産性やロイヤリティも向上させられるか
 ②従業員ロイヤリティや生産性を医療サービスの価値(PX)に還元できるか
 ③患者経験価値(PX)を患者ロイヤリティ(再来率UPなど)に繋げられるか
 ④患者ロイヤリティの向上が病院(クリニック)の収入増加に貢献しているか
 ⑤向上した病院の収益性を職員へのサービス品質(福利厚生含め)へ活かせているか
といった循環(サービス・プロフィット・チェーン)を意識することが非常に重要です。

従業員という人的資源を大切にすることが病院のファンを増やす近道になりそうです。