Patient Experience(患者経験価値)Vol.02
PXとPXの相違点
PSとはPatient Satisfactionのことで、和訳すると「患者満足度」です。
CX、UXなどユーザーや患者様の「経験」を体系的にデザインすることが新たな企業価値と認識されますが、SatisfactionとExperience、何がどう異なるのでしょうか。
こと病院や診療所のターゲットである患者様に関して言えば、退院する時に「この病院に満足しましたか?」と抽象的な問いかけを用いるのが多くのPS調査の特徴です。しかし、満足の根拠は施設なのかスタッフの対応なのか、その施設の何か、どのスタッフのいつのタイミングのどんな対応(言動)なのか、もっとどうして欲しかったかetc…特定できないことが課題です。
また、「満足」とは主観的なものなので患者さんによって同様のサービスを受けていても評価の仕方が違ってきます。
具体的な改善策に結びつかず、形だけの満足度調査になってしまう医療機関もあるのではないでしょうか。
PSがウトカム指標(結果)であるのに対して、PXはプロセス指標なので、結果に至る根拠を割り出すことになります。
つまり、PXの高い医療機関は必然的に満足度も高くなるのです。
PXの測り方
では、具体的にPXは実際どのように測るのでしょう。
PXは複数の項目から成り立つアンケート用紙を用いて測定されます。
例えば、「食事に関して、あなたの意見を尊重されましたか」といった設問があります。いかに患者の意思やニーズをケアに反映できたかが重要なポイントになります。
そして自ずと、そのために必要なコミュニケーションがなされたかも炙り出されるわけです。
PXサーベイは「患者経験価値」(=患者満足度に繋がる)を測るプロセス指標ですが、アメリカ版サーベイ「HCAHPS」と日本版PXサーベイ(PX研究会がイギリス版を編集・実施)にも違いがあります。
HCAHPSは、設問「ナースコールのボタンを押した後、看護師は直ぐに来ましたか」に対して「来なかった・時々しか来なかった・概ねすぐに来た・常にすぐに来た」という回答があります。
これは、アメリカの病院では「常にすぐに来た」を実現したいと考えているため、つまりは満足度を具体的に言語化した状態です。
それに対して日本版PXサーベイは、設問「ナースコールを押してから実際に職員が来るまで、どのくらい待ちましたか」に対して「直ちに(1分未満)・5分以内・5分以上・ナースコールを使っていない」という回答になります。
HCAHPSより具体的、なおかつナースコールを使わない(=ニーズなし)の選択肢が用意されています。
客観的なPXは数値的(量的)なデータだけではなく、インタビューなどの質的データも交えながら患者経験価値の向上に貢献しています。