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インターネットと子どもの安全

この記事では図書館で見つけた「インターネット」と「子ども」に関する本を3冊紹介する。

メディアに心を蝕まれる子どもたち

1冊目は有田芳正『メディアに蝕まれる子どもたち』である。分類番号は367.61である。

著者の有田芳正は日本の政治家、ジャーナリスト、テレビコメンテーターである。過去には参議院議員を務めていた。

この本は現代の深刻ないじめや少年事件の背景にある、発展したメディアの影響、メディアの危険性ついて書かれたものである。

インターネットや携帯電話から個人に向け発信されるメディアからの情報から、子どもをどのように守っていくのか。
批判能力のない子どもは素直にその情報を鵜呑みにし、偏った知識や思考が形成される危険性がある。

第4章では携帯電話が発達し、人との関わり方が間接的になっている事を危惧した内容が書かれている。
一部抜粋して紹介する。

人間は新しい危機を手にすることで身体感覚を変化させてきた。ラジオやテレビを通じて、日本だけではなく世界で起きていることまで認識できるようになった。時計の発達で腕時計をするようになってからは、時間感覚も変化してきた。それと同じように「ケータイ」が身体の一部のようになってきた現代にあって、そこから発せられる信号や情報に身体が反応する傾向が強まっている。いまこそ、学校や家庭において、テレビだけではなくケータイとの「つきあい方」=リテラシーを学ぶことが必要である。

p89

この本は2008年に書かれたものだが、この時代からケータイ、そしてインターネットについて危惧されている。
現在ではまさに、ネットリテラシーが未熟な子どもたちがデジタルタトゥーを残してしまったり、悪い大人に騙されたりする事例が多発しているのだ。

そしてケータイを使用することが、いじめの原因にも繋がると有田氏は述べている。

こちらのグラフはインターネットを使用する頻度が高いほど、いじめをした倍率が高くなる相関関係を表している。
電話を使って呼び出す、写真を撮りメールで流すなど、携帯電話を使用したいじめが増加傾向にある。これらは携帯電話、インターネットが発達したことによる悪影響と言えるだろう。

スマホで子どもが騙される

2冊目は佐々木成三『スマホで子どもが騙される』である。分類番号は367.61である。

著者の佐々木成三は、元埼玉県警察本部刑事部捜査一課の警部補である。デジタル捜査班の班長として主にスマートフォンの解析を専門とし、サイバー犯罪の操作にも関わっていた。

この本はSNSでの様々な子どもの被害について、事件ごとにまとめたり、クイズ形式で問題を取り上げたりしている。
この中で特に気になったものを紹介する。

誹謗中傷する人達に共通する3つの特性があります。
1つは、間違った正義感を持っていること。
「私は正しいことをしている」という間違った認識や価値観のズレがあり、偏った意見を発信してしまうのです。
2つ目は、想像力の欠如です。投稿したら、これがどうなるのか、自分の言動が犯罪になるという想像力がないのです。
誹謗中傷する人は、10代など圧倒的に若い人が多いそうです。物事の奥行きをよく考えず、軽い気持ちで発信してしまうのでしょう。
3つ目は、間違った承認欲求があることです。
「これをすれば周りに評価や共感をしてもらえる」という認識が強く、みんなに認めて欲しいのです。「いいね!」をもらえることで承認欲求を満たしているのでしょう。

p96~p97

誹謗中傷はインターネットの匿名性を利用し、人を心理的に傷つける行為である。
では加害者にならないためにはどうしたらいいのか?こう綴ってある。

・匿名の投稿であっても、誰かが傷つくようなことは投稿しない。
・実際に顔を合わせて言えないなと思った言葉を投稿しない。
・ネットに1度書き込みをしてしまったら、永久に消すことはできないことを知っておく。
・本当かどうか分からない情報に対して、軽々しく「いいね!」やリツイートをしない。

p98

子どもの頃は善悪の判断が未熟で、軽い気持ちで誹謗中傷をしてしまう場合がある。そうならない為に日常的に家庭で教えることが大事なのだ。

第3章の最後の方に書かれていた6つの言葉。
この本のまとめとして、押さえておくべき点を紹介する。

1 疑うところから始める
2 先入観を持たない
3 コミュニケーションのすれ違いは悪いことではない
4 答えは1つではないことを教える
5 「教えない習慣」が自分で考えて動ける子を育てる
6 毎日新しい「発見」をする

p182~p204

逃避型 ネット依存の社会心理

3冊目は大野志郎『逃避型 ネット依存の社会心理』である。分類番号は367.6である。

著者の大野志郎は東京大学大学院情報学環助教、博士である。専門分野は社会情報学、社会心理学、情報教育・情報行動だ。

この本では、インターネット依存に関する研究結果と共に、なぜインターネットに逃避してしまうのか、インターネット依存を構成する要因などについて論じられている。

上記の2冊と比べて内容がより学問的で様々な研究、アンケート結果に基づいて、ネット依存について書かれている。

次のグラフは高校生の逃避型ネット使用の程度とネット使用時間を表したものだ。
グラフを見てわかる通りモバイル時間(スマホの使用時間)にて「いつもある」と答えた人が圧倒的に多い。



また、インターネット依存の要因についてはこのように述べてある。

インターネット依存問題の技術決定論的な要因は、各種のアプリケーションに直ちに繋がることができるというアクセスの容易性と、コミュニケーションをはじめとする現実における活動の多くを仮想的に行うことができる代替性および、現実における欠損を補うことができる代償性にあるものと思われる。対象がオンラインゲームであればオンラインゲーム依存であり、チャットであればチャット依存、SNSであればSNS依存と呼ばれるが、本質的には同一であり、前述のような特性を持つインターネットを媒介とすることで、本来生じるべきでない嗜癖行動が生じるものである。

p190

「現実逃避」という言葉が流行っているように、インターネットの世界へと逃げてしまう小、中、高校生が多い。

依然、私もそのうちの一人なのかもしれない。

インターネットが身近にあることが当たり前になったこの世でしなければいけないことは、逃避目的のインターネット使用を抑制する手段の確立や、学校で逃避的使用に関する啓発を行うことである。

まとめ

この3冊は共通して「インターネット」や「携帯電話(スマホ)」が子どもに及ぼす影響について書かれてあった。

インターネットの利便性が向上すると共に危険性も潜んでいることを再認識できる本であった。

最後に、これから子どもに必要な力とは何なのか、『スマホで子どもが騙される』より引用し紹介する。

私が今の子どもに必要だと思っている4つの力があります。
① 直観力(発見力)
② コミュニケーション力
③ 想像力
④ 受容力
何らかの問題や状況に直面したとき、論理的にその状況を判断し、適切に判断する直観力(発見力)。子どもたちが犯罪に巻き込まれてしまうのは、過去の経験から読み解く直観力が足りないことが大きな原因です。
コミュニケーション力は、他者と交流しながら自分以外のいろいろな価値観に触れることで身についていきます。
想像力は、直観力にもつながりますが、自分が行動をしたら、その後どうなるのかリスクを判断する直観力を鍛えて行動の抑制をコントロールすることが必要なのです。
受容力は、相手の立場になって相手を受け入れる力です。昨今の「誹謗中傷」によるトラブルは、想像力不足もさることながら、受容力の不足が起こしたと言っても過言ではありません。

p176~p180

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