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『こどもたちはまっている』『ちへいせんのみえるところ』③ー長さんの遊び心

今回は、『ちへいせんのみえるところ』に記された謎の名前の話から、荒井良二さんも影響を受けた独特の絵本表現まで、長新太さんの遊び心について語っていきます。長さんの絵本の人気の秘密がちょっと見えてくる…かも??

名前に地平線?!

テン:うち、エイプリル出版の方とビリケン書房の方と両方持ってるんやけど…。
エイプリル出版の方、透明のカバーみたいなんついてて、そこに「この絵本は、地平線という線で描かれた傑作である。チーヨウ・シンター」って書いてある(笑)

ナナ・マヨ:え?え?(笑)

テン:チーヨウ・シンターって。(笑)
これなあに?(笑)

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ナナ:あっはっは、なにこれ面白い(笑)

テン:裏表紙のカバーに印字してあるんよ。

ナナ:透明のカバーってすごいねぇ!

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マヨ:線を入れたってことかな。"長新太(チョウシンタ)"の名前に。

テン、ナナ:ああーっ!

マヨ:「どこに線が入れられるかしら」って(笑)

テン:なるほどー!さすが。

マヨ:違うかなぁ。

ナナ:描く人は違うねぇ(視点が)。

マヨ:「入れてみようぜ~」みたいな感じで(笑)

テン:地平線入れたんや、名前に!(笑)

マヨ:そうそう(笑)

ナナ:シュール(笑)

テン:なるほどなぁぁ~。



長新太流 「小休止」と始まり方

テン:第6画面の「なつをまっている」で初めて、「こどもたちは」の詞がないね。
「なつをまっている」だけ。
それで、次の第7画面のひまわりのページは、完全に詞がない。

マヨ:なんもない。

テン:『東京人』※でさ、荒井さんが長さんの絵本の「小休止」の話してたやん。

※絵本トークvol.12『こどもたちはまっている』『ちへいせんのみえるところ』①参照

マヨ:うんうんうん。

ナナ:長さんって、物語の流れと全然関係ない絵を突然入れるよねー、って話だよね。
「急に現実に引き戻す」とか、"まあまあ"って「熱を冷ます」みたいな効果があるって。
『ムニャムニャゆきのバス』で、バスの正面と後ろ姿の絵が急に入ったりするのとかね。

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ムニャムニャゆきのバス(偕成社 2007年)

マヨ:それを計算でやってるのかなぁ…って話で、"実はかなり意図的に入れてるんだ"って、長さん本人が言ってたってやつやんな。

ナナ:ね。
読みながらハイになってく子どもたちに対して、"まあまあ、そんなに熱くならないでひと息つきなよー"っていうね。

テン:そうそう。
なんか、この第7画面にはそれを感じた。
小休止。

マヨ:うんうん。

ナナ:確かに近いものあるね。

テン:長さんの絵本についての研究でさ、「長新太の絵本には”何かが出現する”タイプが多いけど、その中で『にゅーっ するするする』だけは…」

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『にゅーっ するするする』(こどものとも年少版 1983年9月号 福音館書店)

ナナ:あ!消える! "何かが消失する"…?

テン:そそ。消失するんだって。
確かになぁと思って。
『キャベツくん』とかもボンッって出てくるし(笑)

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『キャベツくん』(文研出版 1980年)

ナナ:「ぼくをたべるとキャベツになるよ」で、「こうなる!」ってね。
「ぶきゃっ」って(笑)

テン:あと、これも『東京人』で荒井さんたち話してたけどさ、長さんの『ゴムあたまポンたろう』も、しょっぱなから突然飛んでくるやん(笑)

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『ゴムあたまポンたろう』(童心社 1998年)

マヨ:"そういう人がいるんやなーって、受け入れなきゃいけない"言うてたもんね(笑)

テン:めっちゃおもろかったよな、あの話(笑)

マヨ:ま、ま、確かにな!とは思った(笑)

テン:ほんまにめっちゃおもろかった。これが、長さんから「影響を受けた始まり方」なんやってな。

マヨ:「だってこうなんだもん」ってとこから始まる(笑)

テン:「『ゴムあたまポンたろう』・・・相当わかんないよね。・・・ゴムあたまポンたろうって人がいることを、俺たち、飲み込まなきゃいけないから(笑)。誰?とか思っちゃいけない。(笑)」だって。

ナナ:あははははは。「説明しない、急に来る」っていう唐突な始まり方を、長さんから学んだんだね。


荒井さんが、長さんから絶大な影響を受けていることがわかりますね。それを思いながら、『こどもたちはまっている』を読むと、また新たな発見があるかもしれません。さてさて、来週はさらに深い話になっていきますよー!お楽しみに♪

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