『こどもたちはまっている』『ちへいせんのみえるところ』①ー美しい水色と黄色の絵本たち
2020年6月20日に発売されたばかりの絵本、『こどもたちはまっている』(亜紀書房)が、とってもきれいだった!とマヨ。
さらに、作者の荒井良二さんが、長新太さんの『ちへいせんのみえるところ』(1978年 エイプリル出版、のちに1998年 ビリケン出版より復刊)のオマージュ作品であると語っていることから、これは両方眺めてみたい!という話になりました。
『こどもたちはまっている』はまだ新しいので、多くは語られていない一方、『ちへいせんのみえるところ』は絵本学で重要な位置付けがされていて、文献も結構あるはず…。
このレジェンドとニュースターを贅沢に読み比べしてみよう!
なんと幸せな。
それでは、はじまりはじまり〜〜。
"えほんシリーズ〈あき箱〉3"ってなんや!?
テン:さて、見ていきますか。
まず感想は…美しかぁ~、やった。
マヨ:ほんまきれい~。
ナナ:荒井さんの作品としては、『あさまど』(※)の系統だよね。
※『あさになったので まどをあけますよ』(偕成社 2011年)
テン:でもさ、ゾウバス※も出てくるやんな。
※同じ荒井良二さん作の『たいようオルガン』(偕成社 2008年)に登場する、ゾウさんの形をしたバス。
マヨ:え、うそ~!
テン:ほら、第7画面のひまわりのページ!
マヨ:うわぁ、ほんまや!ゾウバスおる~。
ナナ:ほんと、シルエットはゾウバスそのままだね。遊び心かなぁ?
テン:あ、私が持ってるのは第1版第1刷。みんなもか。
マヨ:こないだ2版決まったところやもんね。
テン:『こどもたちはまっている』は亜紀書房から出てるけど、奥付の「亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉3」ってなんやろう?
ナナ:レーベルみたいなことじゃない?〈空き箱〉1とか2を調べたら分かるかも。
テン:「亜紀書房えほんシリーズ〈あき箱〉1」がミロコマチコさんのやな。2はスケラッコさんっていう作家さん。
なんのくくりなんかなぁ。それの3番目。
ナナ:続き物じゃないんだけど、わりとそういうシリーズ名付けてることあるよね、出版社さん。
テン:なんか共通点はないんやろか?
ナナ:うーん…なんかのくくりじゃなくて、単にレーベルなんじゃないかなぁ。亜紀書房の"あき"と空き箱をかけて。
マヨ:〈あき箱〉シリーズ、たぶん予想ですけど、あれだね。筒井さんが全部編集してるから…。
テン・ナナ:あぁ~!!!
テン:ほんまや!
ナナ:それっぽいな。
ということで、フリーの絵本編集者、筒井大介さんの編集による絵本シリーズなのかな?という答えに落ち着きました。
"この絵本、編集者の方は誰なんだろう?"と調べてみると、「あ、この絵本の編集も○○さんなんだぁ~!」という発見があったりして、また違った楽しみ方ができますね♪
余白と静けさ
テン:今回は、扉ページから追ってく?とりあえず読み込もうか。
ナナ:うんうんうん。
テン:表紙のカバーは地平線があって、裏表紙は机のラインかな。裏表紙カバーの折り返しのところは水平線かな。
ナナ:つながってんね。
テン:扉ページさ、右の扉絵の方には、あえて絵以外は何も描いてなくて、タイトルと作者は、左の白地の方に書いてあるやん。
ナナ:タイトルと絵が左右で別れてるね。
テン:あんまりないよね、この形。
マヨ:うんうん、確かに。
テン:別に空間としては空いてるから、左の文字を右にそのままスライドしてもおかしくないと思うねんけど、あえてこうしてるんだろうね。
ナナ:テンが見せてくれた『東京人』※(2020年3月号 都市出版)に、その話載ってたよね。
※雑誌『東京人』に、絵本作家の荒井良二さんと及川賢治さんが、長新太さん(1927〜2005)について対談している記事がありました。
制作の裏側や、おふたりの長さんに対する想いなどが綴られていて、とってもおもしろかったので、是非読んでみてください♪
テン:してたしてた!及川さんが、同じパターンでこの前絵本作りました、って言ってたやつね!
ナナ:なんか、シャーリップ※の絵本みたいにしたかったって。
※レミー・シャーリップ(1929〜2012)は、『よかったね ネッドくん』や『ちいさなとりよ』などで知られるアメリカの絵本作家です。
マヨ:書いてたなぁ。
テン:あと、長さんの余白の使い方をおもしろいと思ってる、って話やったね?
マヨ:うんうん。「間がすごい」って。「背景がが省略されてる分、読者が余白から読み取る」みたいな。
テン:そういう意味では、詞がないままに第1画面も進むから…。
ナナ:ほんと、詞がない第1画面っていうのは、長さんの『ちへいせん〜』とおんなじだよね。
テン:それから、対談イベントのレポ※してくれてたTwitterに、"長さんの静けさにおれも付き合おう"って書いてあったね。
※7月4日に、『こどもたちはまっている』の刊行記念として、荒井さんと編集者筒井さんによるオンラインのトークイベントが限定90名で開催されました。その後Twitterにて、内容を端的にまとめていらっしゃるツイートを発見したのでした。
ナナ:いいコトバだねぇ。
テン:筒井さんとの打ち合わせで、最初ダメ出しされたんよね。
マヨ:で、その場でラフ(構想)を描きかえて…ってね。
テン:そうそう、「長さんの静けさに俺もつきあおう」って。
ナナ:ほんとだねぇ。この扉の表現も、そこからきてるのかもね。
テン:静かやもんなぁ。
マヨ:うん。
ナナ:しーんとしてるもんね。黄色がきれい。
テン:しーんとしながらも、何か始まりそうな感じ。朝っていうか。これから、みたいな。
ナナ:『ちへいせんのみえるところ』と比較しながら読んだけど、地平線から出てくるものと、こっちで子どもたちが待ってるものが、同じ場面もあるね。船とか太陽とか。
テン:あるねぇ。時々。
ナナ:がっつり全部同じわけじゃないけど。やっぱりオマージュだからかな?って思うよね。
色々な"横線"
テン:扉と第1画面は水平線、第2画面はこの窓枠が横のアクセントかな?
ナナ:や、奥の水平線じゃなくて?
マヨ:窓枠も、荒井さんの絵本ではキーワードになるよな。
テン:第3画面では山道。
右上の人影は、前のページの子どもたちかなぁ。
ロバちゃんたち、本 運んでるね。
マヨ:うん、"BOOK"運んでる。
ナナ:移動図書館かなぁ。
ナナ:第4画面は橋。
マヨ:貨物列車!(の線路)
ナナ:『たいようオルガン』の第4画面っぽい!橋の色が違うけど、橋の形も画面の構図もそのまんまだね。
テン:この貨物列車だけ、すんごい直線的。
マヨ:なんでやろ。
テン:第5画面「あめあがりをまっている」の色彩、めっちゃきれい。
これは奥が湖かな。
ナナ:白鳥いるね。この真ん中の線より手前が岸かな。ベンチがあって…。
マヨ:ほんときれいやな~!
長さんの『ちへいせんのみえるところ』で出てきた朝日(第13画面)が、荒井さんの『こどもたちはまっている』では夕日(第12画面)になっているところも、なんだか素敵だなと思いました。
『ちへいせんのみえるところ』(を描いた長さん)を後ろから追いかけているようでもあり、横に並んで歩いているようでもあり、離れていく長さんの背中をじっと見つめているようでもあり…そんな景色が見える気がします。
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