阿慈谷ヒフミちゃん。誰にも真似できない"平凡さ"をもった少女。
阿慈谷ヒフミちゃん。彼女は、ゲーム『ブルーアーカイブ』に登場する生徒の1人だ。お嬢様学校である「トリニティ総合学園」の2年生であり、成績不振者が集う「補習授業部」の部長でもある。
彼女は自分のことをよく"平凡"だと言う。自分の大好きなコンテンツのためにブラックマーケットに出向いたり,テストをサボったり(これが補習授業部に入っている理由だ)などなど、「いや平凡じゃねえだろ」と言いたくなるような言動もあるが、(キヴォトスでは他に温泉開発や美食のためにテロまがいの行動をしている生徒がいることも踏まえると)やはりヒフミちゃんは全体的に見て"平凡"だろう。成績も普通だし、運動能力も普通、周りと比べて特にこれといった特技もなし...。
しかし、僕としてはこれこそ彼女の強みであり、特技であると思うのだ。"平凡"であるということは、偏ったものの見方が無いとも言える。もし偏ったものの見方があるのなら、その時点で普通とは違い偏っているのだから、"平凡"ではないはずだからだ。だから、ヒフミちゃんは"誰に対しても偏見を持たずに接することができる"少女だといえる。
補習授業部のみんなはこの"誰に対しても偏見を持たずに接する"ヒフミちゃんの"平凡さ"のお陰で救われた。アズサちゃんは、当たり前の青春を知り、自分の行いが間違いであると確信できた。コハルちゃんは、補習授業部という居場所を得られた。ハナコちゃんは、自分を才能ある人としてではなく"一人の生徒"として見、交流してくれる友達を得られ、尊敬という重圧から逃れられた。
なにより、あの「ブルアカ宣言」はまさしく彼女を表しているセリフと言えるだろう。ここでの彼女のセリフは、全体を通して"理不尽な、偏見に満ちた世界に対する怒り"が現れている。彼女の"平凡さ"からくる、「世界は虚しい」という考えへの反発だ。
ここで勘違いしないで欲しいのは、なにもヒフミちゃんはアリウススクワッドに怒りを向けているのではないということだ。怒りを向けているのは「世界は虚しい、偏見をもつだなんて当たり前だ、愛なんて無い」という考えそのものであり、ゆえに間接的にアリウススクワッドに敵対している構図になってしまっているだけだ。彼女自身は、アリウススクワッドに対して怒りや嫌悪は感じていないだろう。なぜならば、彼女は、敵対している相手だからといって"誰に対しても偏見を持たずに接する"ことは絶対にやめないからだ。
"誰に対しても偏見を持たずに接する"ということは、なかなかできることではない。「あいつなんか怪しくね」「生理的に無理」「理由はないけどなんかダメそう」「高学歴なんだからきっと〜」「所詮はAの地域の出身だから〜」など、我々は常にと言っていいほど何かしら偏見をもって生きている。そういった感情を一切もたず、他者を一から理解しようとする彼女の姿勢は称賛に値する。
簡単には真似できない、いや、誰にも真似できない"平凡さ"だろう。
誰にも真似できない"平凡さ"をもった少女、阿慈谷ヒフミちゃん。その唯一無二の強さに自信をもち、これからも力強く生きてほしい。