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小説(7):革命

「齋藤さん陸上部に入るのかー。俺もそろそろ何か始めた方がいいのかなー。」
と一人呟く。
確かに僕の周りにも中学になって部活を始める人が増えてきているのは感じていた。
それに、放課後はたまには和紀と遊んだりするがそれ以外の日は家に帰るとテレビを見るか漫画を読むか最近親に買ってもらったゲームをするかの三択だ。
この時間のテレビ番組は大抵ニュースでつまらないし、漫画は台詞がそらんじられるほど読んでおり、ゲームは既に全クリした。
もう時間を潰す手段が無くなっていた。

僕は、和紀には申し訳ないが、明日、部活の見学に行ってみようと思った。

「さて・・・何の部活の見学に行こうか。体育会系か文化系かまずは決めないといけないな。えーっと、僕は運動ができる方だからやっぱり体育会系かな・・・いや、でも文化系の方が取り組みやすいのかな。いや、でも齋藤さん陸上部だもんなー。そしたら僕も陸上部・・・いやいや、それは短絡的過ぎるか。そしたら、オーソドックスにサッカー部とか?でも顧問の先生怖そうだな。えーっと、んー、あー!もうこうなったら和紀も無理矢理連れて行って一緒に回ろう!」
そう決めた。
部活はいいやと和紀は言っていたが、まあついでに齋藤さんを見に行こうとでも言えばのこのこついてくるだろうと思った。

翌日、学校へ向かう途中で和紀にそのことを話すと、二つ返事でOKされ、やっぱり和紀は和紀だなと感じた。

放課後、僕らは運動場へ向かっていた。
学校が終わると一目散に正門から出ていた人間が、こうやって運動場に向かうと、慣れないせいか非常に緊張するのである。
二人とも忍び足で校舎から運動場への道を歩いていると、後ろから集団の足音が聞こえてきた。
振り向くと、走っているのは陸上部と思しき部活生達だった。
二人ともその場に固まってジーっと通り過ぎていく列を見ていると、列の一番後ろで走っているのは齋藤さんだった。
僕が「おっ」と驚くと、彼女も気付いたらしく、走ってキツそうにしているにも関わらず、周りの部員にばれない程度に手を振ってくれた。
僕も小さく手を振り返した。

集団が遠くに行って、横にいる和紀に
「今のが齋藤さん。」
と言うと、彼は、
「なんだよ、お前もう仲良しじゃん。うらやましっ。」
と、ぶすっとした表情で言うもんだから、お前はなんて可愛いやつなんだと思いつつ僕は上機嫌のまま運動場へ歩いた。

(8)へ続く・・・


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