小説(10):革命
僕は楽器を弾いたことが無い。
いや、リコーダーや鍵盤ハーモニカなら音楽の授業で弾いたことはあるが、自分から進んで楽器を弾いたことは無かった。
「いい音だな」
純粋にそう思った。
店内に流れるジャズ系の音楽に乗せて、即興だろうか、指がなめらかに弦を滑っていく。
あれくらい弾けるようになったら気持ちいいだろうなぁ。
そんなことを思ってぼーっと眺めていると、ふと顔を上げたお兄ちゃんの視線が僕にぶつかった。
「あれ、初めて見る顔だね。」
「え、あぁ、いや、こんな店、前にあったかなーと