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小説(6):革命

授業が終わり、家への帰り道で彼女のことを思い出していた。
すると、
「おい涼、お前昼休みどこ行ってたんだよ。俺ら体育館でバスケしてたんだぞ」
といきなり話しかけられたので僕はビクッと驚いてしまった。
「え、そんなこと言ってたっけ?」
「朝言っただろー。お前がいなかったから俺ら人数少なくてキツかったんだからな。明日もやるから忘れんなよ」
そう横で話す彼は山下和紀(かずのり)である。
家が近いので小学生の頃から一緒に登下校しているのだ。
中学になってもほとんど学校帰りに通る道は変わっていないので相変わらず二人でブツブツと話しながら帰っているのだ。
何年も一緒にいる彼とは大体のことは何でも話せる仲である。
「ちょっと齋藤さんがどんな人か見に行ってたんだー」
「え、あの二位だったやつ?可愛かった?」
なんて単純な人間だろう、二言目にその言葉が出てくるなんて。
彼のその単純さが僕は時々羨ましくなる。
ただ、「時々」である。そこはしっかりと強調したいところだ。
「まあまあ可愛かったぞ。陸上部に入るんだって。」
「可愛かったの?よっしゃー!俺も友達になりたいなー!」
おい、お前には可愛かったという単語しか聞こえなかったのか。
「俺らも部活とか入った方がいいのかな?」
「え、なに?部活?なんで?」
「いや、齋藤さん陸上部に入るって言ったじゃん」
「え?言ったっけ?まあいいや。俺は部活はいいかなー。昼休みで満足だ。え、涼なんか考えてたりすんの?」
「いや、全然」
「なんだ良かったー、お前が部活入っちゃったら俺一人で帰らないといけねーじゃん。それは嫌だよー」
たまにはこいつも結構可愛いことを言うもんだ。全く悪い気はしない。                                         

そうこうしているうちに和紀とは別れ、僕は家へ歩いた。
向かう場所はおばあちゃんの家ではなく自分の家である。
中学生に上がると両親は僕に家の合鍵を作ってくれ、僕はおばあちゃんの家に行く必要がなくなったのだ。
今となってはおばあちゃんの家に行くのは月に一度くらいであり、名探偵コナンはもう読んではいない。

ガラガラと家の引き戸を開けて、リビングの電灯の紐を引く。

僕は、帰宅するとまず小学校レベルに毛が生えた程度の宿題をする。
別にバカにしてはいない、これは実体験に基づくれっきとした事実なのだ。
事実を述べて何が悪い。
勿論全く歯ごたえがしない、なんだお前は、豆腐か。
寧ろ豆腐の方が歯ごたえがある可能性が高い。
もう少し歯ごたえがあるもの持って来いやぁという高飛車な気分になるのを許してくれと思うほどである。
二〜三十分程で終え、僕はそれを終えてまた彼女のことを考えた。
別に恋というほどではないが、彼女のことを確かに気になっている自分がいた。

(7)へ続く・・・


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