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小説(9):革命

歩いている途中である疑問が浮かんできた。
もしかして、和紀は齋藤さんに惚れてしまったのかもしれない。いや、絶対そうに決まってる。そうでもしなきゃ走るのが好きでもない和紀がいきなり陸上部に入るなんて言うはずがない。

「お前まさか齋藤さんに惚れたのか・・・・・・?」
和紀はニヤリと笑って
「教えねーよ。」と言った。

長年付き合ってきたからこそわかるが、和紀はウソをつくときに疑問に対してYESかNOではなく「教えない」という言葉を使う癖がある。
大当たりだ。こいつは齋藤さんに惚れている。ああ、これが一目惚れというやつか。よりによって部活に入るか入らないかの大きな決断の時に。

和紀と別の道になる前に本当に陸上部へ入るのか何度も聞いたが、和紀の決心は予想以上に固く、失敗に終わった。

和紀と別れ、「はぁ」とため息をついて家へと歩いていると、なんだか色んな事で頭がぐるぐるしてきて、どうせ今家に帰っても考え事で何も手に着かないだろうと思ったので、たまには少しゆっくり遠回りして帰ってみることにした。

ぶらぶらと歩いていると寂れた商店街に着いた。僕が小さかった頃はもう少し活気があったイメージがあったが、今となってはシャッターが下ろされた店が半分近くに上っている。その商店街の「メインストリート」とはもはや言えないようなかつてのメインストリートを歩いていると、商店街の一角に見慣れないお店があった。

「ギ、ブソン?」
看板にはアルファベットでGibsonと書かれており、聞き慣れない名前だったので恐る恐る店内を覗いてみると、店内には所狭しとギターなどの楽器が並んでおり、中央では良い感じにパーマがかかった30過ぎくらいのお兄ちゃんがベンベンベンベンと気持ちよさそうにギターを弾いていた。

(10)へ続く・・・


あなたのおかげで夕飯のおかずが一品増えます。