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満 天 スキトオル(仮)第1話「転校生はRUAC(ルーアック)」

これまでのあらすじ


ソラたちは地上での生活を始めることになった。彼らが地下に14年間という長い年月、監禁されていたというこの信じがたい事実は、日本国内のみならず、世界中を震撼させた。ニュースで報じられるうちに、人々は彼らのことをRUAC(ルーアック)と呼ぶようになった。これは「地下拉致監禁事件の難民たち(Refugees in Underground Abduction and Confinement cases)」の略称である。

一方で、地上に住み続けていた人々のことを、ルーアックたちはルーミナ(光を受けし者たち、光の住人)と呼ぶようになった。この名称は、彼らが常に光を浴び、地上での自由を享受してきたことを象徴している。

***

転校生

西中3年C組

彼が教室に入ってきた瞬間に目を奪われた。
「透明感エグ」
思わず声に出てしまった。
先生に連れられてやってきた転校生は同じ男とは思えない、華奢で、肌が白くて、目は青空みたいに透き通った青で、髪は細く柔らかそうな同じ日本人とは思えない、色が抜けたような明るい茶色、太陽の光で亜麻色にも見える。
「青木ソラです。よろしくお願いします。」
声まで透明感。無垢で何の汚れも知らないような清潔感。
「青木君はみんなニュースで見て知ってると思うが、彼はRUAC(ルーアック)で地上での生活に慣れていないので困っていたらみんな助けてあげてね」
先生の説明で、教室中がざわついている。
「るーあっくってはじめて見た」
「あー例の地下難民かー」
「地下で3万人拉致とかほんまやったんや」
みんなが口々に噂話をしている中、ミチルはソラに釘付けになっていた。
「後の窓側の席が青木君の席よ。あそこに座って?」
と先生がミチルの隣の席を指す。
ドキドキした。ソラが一歩近づくごとに心臓の鼓動が大きくなっていく。
ソラがカバンを机の横にかけながら、ミチルの視線に気づく。
「よろしくね」
と微笑むソラ。
「よ、よろしく。僕,木下 満。ミチルって呼んで!」
とミチルはぎこちなくも手を差し出して握手を求めた。
ソラは一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐにまたニコッとしてミチルの手を握り返した。
「よろしく、ミチル」
「うん。隣の席やから、わからんことあったら何でも聞いてな。遠慮せんでいいよ。」
「ありがとう。」
爽やかなソラの笑顔にミチルはときめく。
生まれて初めての感情に、すぐに自分の恋心に気づいた。

休み時間になり、みんなソラに興味津々。
「何で名前カタカナなん?」
「ホンマに地下産まれ地下育ち?」
「地下って酸素あるん?」
矢継ぎ早の質問に言葉に詰まるソラ。
「アホー。宇宙とちゃうんねんで、あるに決まってるやろ?ほらもうソラ君困ってるからまた今度にしい」
ミチルが見かねて助けに入ると、ちょうどチャイムが鳴った。
ミチルがソラの方をチラッと見ると、ソラもミチルを見つめていた。
目が合い頬を染めるミチル。
「ミチルって優しいんだね。」
「みんな悪気ないねんよ、許してあげて?」
「大丈夫。ちょっとビックリしたけど」

***

数日後・・・

採点後のテストが返却された。
地下の中学では学年トップの成績だったソラだったが、返却されたテストの点数を見て愕然とした。
「さ、32点?・・・俺ってバカだったんだ・・・」
机に突っ伏すソラ。
「ソラ君そんなに落ち込まんでも。地上の勉強まだ慣れてないダケやって。これから頑張れば大丈夫やって。」
「98点のやつに言われても惨めなだけだー」
「コレはたまたま」
そーいえば、なぜ、都市部ではなくこんな微妙な地域にRUAC(ルーアック)を受け入れたんだろうと思ってたけど、もしかしたら、学力的な問題なのかも。去年の全国模試で堂々の最下位を取った我が校だが、順位とか学力とか気にしないおおらかな地域っていうのもある。その反面、ルールを守る人も少なく治安が悪い区画もある。
そりゃ14年も地下に監禁されて、地上の情報もほとんどない状態なら、地上と同じ水準の学力がある方がおかしい。

***

昼休み


ソラはいつも屋上で1人パンを食べていた。
「ソラ君みーつけたっ」
ある日クラスメイトのミチルが屋上にやってきた。
「こんなトコにいたん?」
「んー?」
ソラが紙パックのコーヒーを飲むズズズっという音を立てながら気だるげに返事をする。
「僕も一緒に食べていっ?」
許可を獲る前に横に座り弁当箱を袋から取り出すミチル。
「ミチルって彼女いんの?」
「ふぇ?」
唐突な質問に驚きすぎて変な声が出た。
ソラは何事も無かったかのようにパンをモグモグ食べている。
「えーっと、おらんよ?」
聞き間違えかとも思ったが、一応返事をするミチル。
「俺のこと好き?」
「ふぇ?」
また変な声が出てしまった。
何で分かったん?え?何でバレてんの?結構ナチュラルに男友達路線で来れてたと思ったのに。これはたぶん、「俺男興味無いから」とか「男が好きとかキモい」とか言われて距離取られる流れか?だとしたらここは嘘でも否定して友達路線から友情を育んでいったほうが・・・でもここで変に嘘をついたら立つフラグも立たない。ダメでもともと、素直になれ俺!
「うん。・・・なんで分かったん?」
ミチルが答えに悩んでいた3分間。体感では結構長めの沈黙の間もソラは何事も無いみたいにパンをモグモグしていた。
「前に俺のこと好きって言ってくれたやつと同じ目してたから」
「うぇえ?へーえ、そうなんや」
いきなりライバルの存在を知らされ呆気に取られるミチル。
ソラが紙パックのコーヒーを飲むズズズっという音だけが響く。
「俺たち付き合う?」
「フェ?今なんて?」
ずっと恥ずかしくて横目でソラをチラチラ見ていたミチルも驚き過ぎてソラの方に勢いよく振り向く。
「お れ た ち つ き あ う ?」
あと1mmでも動けばキスしてしまいそうな距離で顔を近づけてさっきまで気だるげにボソボソ話してたソラが、ハッキリとした滑舌で言った。
まっすぐ見つめてくる水色の瞳に吸い込まれそうになる。いや、そこは青空のような透き通った瞳bleu Skyだろと心の中で謎のツッコミ。
「きゅ、急に振り向くなよバカ。キスしそーなったやん」
「いや、いきなり振り向いたのそっちな。聞こえてないっぽかったから耳元で言おうとしただけじゃん」
見えなくても自分の顔が真っ赤になっている事が分かるくらい顔が熱くなり、あまりの恥ずかしさに俯くミチル。
ソラはまた何事も無かったかのようにパンをモグモグした。
「付き合うって、ソラ君も男が好きなん?」
あんなにハッキリ言われたのだからちゃんと返事せねば。でも恋愛対象なのかはハッキリさせたい。そういうつもりじゃなかったとか後から言われたら辛すぎる。
「うーん、男が好きとか女が好きとかあんま考えたことないけど。ミチルのことは好きかな」
突然の告白に心臓が破裂しそうなミチル。おいおいそーいうことをなんの恥ずかしげも無くいうのか?かっこよすぎ。好きすぎるだろ。おい。
当の本人は最後の一口のパンをまた何事も無かったかのように口に放り込んでモグモグしていた。
「僕のどこが好きなん?」
いやん。女々しいと思われたかもと後悔しながらも聞かずにはいられない。いつどこで何で好きになったか全くわからん。そんな会話もしてないし。
「んー、顔?」
顔かい!ちょっと期待しすぎた。
「ソラ君ていっつも屋上でメシ食べてんの?教室いつ見ても居らんから結構探したわ」
あまりの恥ずかしさに、話をそらす。しかし、根本的にお前のこと好きすぎて、校庭の隅、下駄箱の裏こんなとこにいるわけも無いのに君のこと探してたよ的な路線で。一本勝負!
「うん。雨の日以外は基本的に」
「紫外線お肌に良くないよ?光合成してるん?」
さっきの質問に答えてないことを全く追求して来ないソラ。答えてない側のくせに、何だかいたたまれなくて、女の子を揶揄うみたいなテンションで適当に返すミツル。
「俺、14年太陽光浴びてないからさ、浴びれる時は浴びとこーと思って。太陽光ってビタミンDの生成を促したり、浴びない方が健康に悪いらしいで」
そうだった。ソラは14年も拉致監禁されてた地下難民だということをすっかり忘れていた。
なんか、すっげーデリカシーなかったかもと反省してしょぼんとなるミツル。
「そーゆーとこ」
「ふぇ?」
あ゛ーまた変な声でたーぁ。
「みんな俺の事、可哀想な地下難民って目で見るのに、お前だけちゃんと1人の男として見てくれてるよな?そーゆーとこスキ。」
すっごく爽やかな笑顔でサラッと言うてくるソラ。カッコよすぎやろ。こっちはまだ好きのスの字も言えてねー。
「ちょっとスピード早すぎてついてけへん。そういうことサラッと言い過ぎ」
あまりの恥ずかしさに俯き頭を抱えるミチル。
「どした?熱中症?」
「ちげーし。ソラ君カッコよすぎて火照っただけぇ」
あーっと伸びをして空を見上げるミチル。
「元気なら、さっさとメシ食った方がいいぞ?もう昼休み終わるで?」
「え゛?!」
マジか?と腕時計を確認するとあと5分しか無かった。
急いで弁当をかき込むミチルをとっくに食べ終わっていたソラはただただ見つめた。
「そんな、見んで?照れるし。」
「他にすることねーし。俺たち付き合うん?」
「そんなついでみたいに聞くなし。こっち心の準備しとらんかったのに急すぎてついてけんて」
「付き合わんの?」
キョトンとした顔で聞いてくるソラ。
「付き合うし。付き合うに決まって・・・」
最後まで言い終わる前にソラがミチルの唇をペロッと舐めた。
「ふぇ?」また変な声出た。
「ご飯粒付いてたで。白飯うまーぁ」
毎日パン食い飽きたわーと顔をくしゃくしゃにして笑うソラ。

***

つ づ く

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