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第15話「物語は回転木馬のように」

 「多分、父さんは日記を書くようなマメな人じゃなかったんだろーな。」

 ソラは自室でトオルが見せてくれた日記の事を思い出していた。父親の存在した証のようで少し羨ましかった。父親の写真すら見た事がないソラはあまり父親の存在を感じられなかった。

 「これが父さんの唯一の形見か。」

 ソラは1冊の小説を手にして呟いた。『傘』というタイトルで表紙にはひとつの傘をさした男女が描かれている。そこには地上の事が当たり前のように描かれており、地下生活では感じることのできない感情をソラは感じてしまっていた。ソラはこの本を読んでから地上に憧れを持つようになったのだ。何度も読み返したのか本はぼろぼろになっていた。

 法律で禁じたところで人々の心の中から空が消えることは無かった。語り継ぐことができずとも法律では個人の書物までは統括できない。実際は皆忘れた振りをしているだけなのだ。

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