【#シロクマ文芸部】春とヒヤシンス
春と風信子は姉妹でした。
遠い遠い昔、ある所では冬が風邪をひいた事により、寒い時期が長引いていました。
そこで春が冬の看病をしに行きました。
春はヒヤシンスにこう言いました。
「今から長い間、出かけるけど、ジッと待っていられる?」
その問いにヒヤシンスは「もちろん!」と双葉を揺らしました。
春は冬の所へ行きました。
ヒヤシンスは約束通り、待ちます。
ですが、いつまで経っても春が帰って来ません。
最初は何かあったのかなと心配しますが、時が経つに連れて、もしかして嘘を吐かれたのではないかと疑うようになりました。
それでもヒヤシンスは待ち続けました。
しかし、限界が訪れました。
ヒヤシンスは今にも枯れようとしていました。
あぁ、このまま春に会う事なく朽ちてしまうのか――と思ったその時です。
一陣の風がヒヤシンスをなびかせました。
それはホッとするような暖かい風でした。
「お姉ちゃんが帰ってきたんだ!」
そう思ったヒヤシンスはたちまち元気になりました。
彼女の言う通り、暖かい風が吹き続け、日が出るようになりました。
ようやく春が訪れた事を喜ぶかのように、至る所で花が咲き乱れました。
ヒヤシンスもまたスクスクと成長し、立派な花が咲きました。
「ただいま!」
春が風に乗って帰ってきました。
「お帰りなさい!」
ヒヤシンスは姉の帰還を心から祝福し、二人仲良く季節の恵みを楽しみましたとさ。
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