今日は抱かれるんじゃなく、抱きしめられたい気分
それは多分、今年一番綺麗な夜だった。
ここの夜景、なんか好きだなって言ったら「俺もここが一番好き」って、それ、前も全くおんなじ会話したよなって何故かうれしくなった。そして刹那感じる浮遊感。これ、大好きなの。言葉以外でそう伝えたくてシフトレバーを握る君の右手にそっと私の左手を重ねた。一緒に運転してる気分。この真夜中を乗りこなしてる気分。
スタバのラテを飲みきったころ、行く宛もなく、遠くに来すぎておしゃれな店もビルもなく、そこだけ煌々と、ぽつんと明るいマックに辿り着いた。仕方なくなのにわくわくするのが、夜中のマックと多分、君の不思議。ずっと前、そうたしか十年くらい前、まだ君のことあんまり知らないときに二人でマックに来たことがあるのを思い出した。今の今まで思い出さなかったことが思い出せてなんだか得した気分。当時もふーん、マックとか行くんだ、って意外だったけど、十年経っても君ってあんまり変わってないんだね。甘えたくなって腕を絡めて、猫みたいに身体を擦り付けた。レジに並びながら。
仕事中は眼鏡なんだとか、まだ知らないことばかり。知らないことがまだまだあるから、君はいつまでも魅力的。だから私も君には秘密ばっかり。いつまでもこうして真夜中にドライブしたいから、私の心がどこにあるかなんて地図は絶対に教えてあげない。
寂しさや苛立ちを埋めるために君を利用した。今日もそのつもりだったのに
気が変わった。寂しくない、というよりなんだか居心地がいい。少し満たされて、少し足りなくて、具合が悪いふりをした。今日はセックスしたくない気分。ただ抱きしめられたい気分。それを許してくれる優しい君が好き。多分この先もずっと。
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