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忘れ物

夕暮れは
赤いポストを忘れていった
予備校の帰り道

恋する少女の頬さながらに
そこだけは暖かい

…二浪したので、予備校とは縁が深い。とはいえ、よくサボって川辺を何時間も散策していたものだ。朝に家を出て、電車に乗っても予備校の手前の駅で降り、長い川沿いの道をひたすら歩き続け、疲れたらそのまま逆方向に戻ってくる。この道は舗装されていない砂利道であり、地元の人も通わぬところであるので、一日中私はひとりきりであった。孤独であった。ただ川原のススキばかりが私に親しいのであった。そして戻ってきた駅前の夕暮れの公園で一服したらまた電車に乗って帰って帰宅したものであった。こういったことを繰り返した浪人時代である。因みに現在の我が職業は売れない予備校講師であるのは、何の因果であろうか。


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