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私の英語多読遍歴93:Pachinko

ベストセラーで読み解く現代アメリカ」で紹介されていたのを読んで以来ウィッシュリストには入れていたのですが、そのページ数の多さに腰が引けてずっと読んでいませんでした。この前500ページ超えの本を読めたので、じゃあこれもいけるかと思って購入してみた次第。

主人公は朝鮮人の女性。日本が朝鮮半島を支配下に置いていた時代に日本へと渡り、移民一世としての生活を始めます。この時代、たくさんの人たちが夢を描いて日本へと移民していたのですが、その現実は過酷なものでした。

戦争の時代、戦後の復興の時代、常に貧困と差別に苦しみながらも子供たちの未来に希望を託して必死で生きる主人公。時代が変わるとともに物語の中心は彼女の子供や孫になっていきますが、常にそこには「在日朝鮮人」としての苦しみと悲しみがついて回ります。

著者は韓国系アメリカ人ですが、過去の同胞への仕打ちに対する怒りだとか、そういう内容ではありません。実際に多くの人々から聞いた体験談をもとにしているので描写などはとてもリアルではあるものの、あくまでも淡々と、第三者目線でストーリーは語られています。一方で秀逸な描写で登場人物たちの抑えた感情まで静かに伝わってくる、そんな文章です。

移民一世〜三世の苦労もそうなんですが、その周りにいた日本人たちの話も辛かったです。救いようのない諦めや哀しみなどがずっと漂っていて、ひとりひとりは悪い人ではないのに、生まれる時と場所が悪かっただけでこんなに辛い目に遭わなくてはいけないのかと胸が締め付けられる思いでした。

なにより悲しいのが、これが決して過去の話だけではないこと。1989年がこの本のラストではありますが、そこから何か良くなっただろうか?と自問してしまいます。今でも差別は存在し、セーフティネットからもこぼれ落ちた人々の暮らしは何一つ変わっていないのではないでしょうか。

ボリュームが相当あるにもかかわらず、内容がとにかく濃くてあっという間に読めてしまいました。英語もとても読みやすかったです。基本英語で書かれていますが、朝鮮語や日本語も混じります。英語で書かれていても、これは日本語で会話しているんだろうなというところなども多いです。普段時間はあっても集中して洋書を長時間読むのってまだまだしんどいのですが、この本はすぐに引き込まれて時間を忘れて読んでいました。

いっそ大河ドラマでいいよと思うくらいの濃密で壮大な話でしたが、テーマがテーマだけに日本でのドラマ化などは難しいでしょうね。あっちこっちで火がつきそう。。

タイトルと厚さからハードルが高そうに見えるかもしれませんが、これは読んでよかったしすごく面白かった。おすすめです。

以上「Pachinko」でした。

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