行動する、とは記憶に残る人になること

日常生活で「記憶に残る」というのは、意外と難しいんじゃないか、とふと思った。

「記憶に残るプロジェクト」「記憶に残るマンガ」「記憶に残る旅」、そういう「大仕事」をするような、記憶に残る出来事はいくらでもある。日常は、同じような出来事を繰り返して積み上がっていくから、出会う人出会う人に「その人なりの人生があるんだ」ということを、うっかりすると忘れがちだ。

育児休職から復帰して、1ヶ月。私は4年前に転職したのだが、その時以来、会っていない人にも連絡してみた。一応、仕事上の用事があった、というのもそうだが、なんとなくずっと記憶の片隅にあって、ちょうどいいきっかけになった感じ。

私が連絡をした人は2人いて、そのどちらの方とも、同じようなタイミングで知り合った。当時、私はフリーペーパーの編集部に在籍しており、そこへ売り込みの電話をかけてきた芸能事務所の人たちだった。彼らはお互いに面識はない。小林さん(仮名)は、大手事務所の新人さん。田辺さん(仮名)は、いわゆるベンチャー系といいますか、そこまで大きくはないけど知名度はある事務所の新人さん。

小林さんの電話は、間違え電話なんじゃないか?と思うほどだった。緊張していたのか、自分の会社の名前を名乗り忘れ、アポイントの約束をしたのにご自身の連絡先は私に伝えずに電話を切ってしまった。わりと忙しい夕方の時間帯に取った電話だったこともあり、「受けてはいけない電話だったかも・・・」と少し不安になった。

田辺さんの方は、流暢な話ぶりで手際がよく、かけてくる時間帯は絶妙で、昼ちょっと過ぎくらいの編集部的にはゆったりしている時。ベテランの人がかけてきているんだと思ったほど、ていねいで腰が低かった。

それぞれ二人にお会いして話を聞いていたら、2ヶ月前にこの仕事を始めたばかりだ、という。小林さんは、電話の印象とは随分違って、落ち着いた人だった。飛び込み営業を初めてした彼が担当しているタレントさんは、私も取材したい人だったので依頼することにした。その後も、度々、仕事をお願いし、転職してからはそれきりだった。

田辺さんとは、仕事をお願いするまで時間がかかったが、このかた自身が面白くて、あちらが売り込みしたい時に何度も会って、雑談もして、なぜか人生相談のようなことも受けていた。

飛び込み営業のようなことをしてくる人は、思っているより少ない。すでにつながりが出来ている中で、担当者が変わることや自分から会いに行く方が多かったから、とても新鮮だった。

私としては、結構、記憶に残っていたガッツのある方々だったので、連絡したくなったのだ。あまり関係ない仕事かもしれないけれど、もしかしたら何か役に立てるかも?と思って。もう忘れられていても仕方がないし転職しているかもな、と思っていたら、なんと二人とも返事が返ってきた。

そして、ちゃんと覚えていてくれた。タレント事務所の人は、毎日、山ほど人に会っているだろうに。

「ご無沙汰してます! 僕、覚えてましたよ。お顔も雰囲気とか、ぜんぶ」と小林さんは言ってくれたのだ。もちろん、人の名前と顔を覚えるのが仕事なのだが、何回会っても忘れる人というのもいて、その度にちょっと悲しい気持ちになるから、覚えててもらえるとものすごく嬉しいし、大仕事を終えた後のような気分になる。

小林さんは、前より偉くなっていて、雰囲気もベテラン、という感じになっていた。

田辺さんも、会って一言目が「雰囲気が変わりましたね」と親しみを込めて言ってくれた。彼は今、アイドルグループをプロデュースしているらしく、当時も愚直で努力家だったが、パワーアップしていた。田辺さんは本当におもしろい人なので、また別の機会に書きたいと思う。

二人とも私のことを覚えていてくれた。私は確かに仕事をお願いしたけれど、彼らがチャレンジしている最中に知り合えたから、覚えていてもらえたのだ。

「いつもなら、こうやるよね」という方法を少しズラしてアプローチされるだけで、こんなに記憶に残るのかと実感した。飛び込み営業自体は、一般的だし推奨されなくもなってきている。でも、「他の人とは違うやり方を恥じたりせずにできる人たち」という風に私の中では記憶に残っている。

メタップス社長の佐藤航陽さんの、

というツイートを読んで、なるほどと思う。

行動すると日常生活がチャンスに変わるのは、行動自体にも意味があるのはもちろんだけれど、誰かの「記憶に残る」→「こういう人だと認識される」→「声がかかる」というサイクルが回り出す。こっちの副産物が実は大きな収穫なんじゃないか、と気づけた出来事だった。


今日のアクション

私はアウトプットへの羞恥心が強いので克服したい。まずは彼らから得た学びをここに書き出したので、明日の学びスペースを脳内に作った。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?