映画「Boy Erased ある少年の告白」自分の知らない世界を知ることの、力強さ
映画の紹介をしばらくしていなかったので、どの映画にしようかとても迷った。映画が好きなので、あと軽く30作くらいは「好き。おすすめです」と言える作品がある。
その中で、どうして今回この映画を選んだのか?というと、つい先日ニュースを見聞きし、沢山の人々と同じように憤りとやるせなさ、悲しみを覚えたから。
この作品「Boy Erased」邦題は「ある少年の告白」は2018年に公開された。私は主演俳優のLucas Hedgesの前作「Manchester by the Sea」邦題は同じく「マンチェスター・バイ・ザ・シー 」を観て、すっかり彼のファンになってしまった。(この作品もとても良いので、ご覧になっていない方は是非)
彼は人気俳優で、その後も、私の人生のロールモデル!これまた大好きな俳優、脚本家でもあるGreta Gerwigが初監督を務める「Lady Bird」邦題「レディ・バード」(こちらも最高なので是非)にも出演したり、その数年は「映画館に行くとルーカスに当たる」みたいな雰囲気だった。
さて、本題に戻ろう。そんな、気になっていた彼の主演映画という事もあり、私はずっと楽しみにしていた。映画を観る前はあまり下調べをしない方なのだが、題名やポスターから知れる通り、複雑なお話なんだろうなぁ、と思っていた。
原作者のガラルド・コンリーが実際に体験し、回顧録として実態を告白した「矯正治療(コンバージョン・セラピー)」での出来事。強制的に性的指向やジェンダー・アイデンティティを変更させようとする科学的根拠のないこの治療は、鬱や深刻なトラウマをもたらすだけでなく、自殺率の高さも指摘されている。米国では、規制は進んでいるものの現在も施され続けており、これまでに約70万人が経験、そのうち約35万人が未成年のうちに受けたといわれる。(オフィシャルサイトより抜粋)
とても深い映画であった。私は映画鑑賞後、原作も読んだが、そちらもとても良かった。
特記すべきは、これらのセラピーが今も世界中で行われている、ということ。
原作者のインタビュー
以下は筆者Garrard Conleyのインタビュー。左に座るのは、彼が「彼女がいなかったら今、自分はいなかったかもしれない」と語る、当時唯一の理解者であった母Martha。この物語は、彼女の話でもある。映画のネタバレにもなりえるので、鑑賞後の視聴をおすすめします。(ビデオ内に性的暴行の描写があります)
信仰とLGBTQコミュニティ
カナダは同性婚が合法化されている。私の住むトロント市では、毎年6月のプライド月間を街全体でお祝いしているが、世界中で行われるパレードに雨を降らせるのが、宗教施設(※全部が全部という訳ではない)やその他の団体である。施設の外壁にヘイトの垂れ幕を垂らしたり、スピーカー等を使ってヘイトスピーチをする事もある。悲しいが事実である。下の動画は北米で見られる、それらのパレードの様子なども切り取っている。やや言葉が過激なのでご了承を。
知らない事が怖いのは当たり前
人間は自分の知らない物事に恐怖感や敵対心を燃やすものだ。それは、生物的反応だと思う。ただ、知ればいい。知る事を怠けてはならない。
アメリカ、ブルックリンで生まれ育った主演のルーカスは小学校グレード6(日本で言う小6もしくは中1)の時に、性教育で「セクシュアリティーとは白黒、2パターンに分けられるようなものではなく、ある範囲の中で揺れ動くようなものだ」と教えられたと話している。(筆者意訳)
また、
出演者であり、LGBTQコミュニティの一員だと表明しているアーティストのTroye Sivanはインタビュー内でこう話す。この映画の脚本を読んだときに出演を決意、
「誰かの命を救えると確信したんだ」
こちらでも書いたが、以前カナダ、オンタリオ州で性教育カリキュラムが改変(縮小)されようとした時に、小学校から中学、高校に通う子ども達がプラカードを掲げ、叫んでいた。
「私達の中の誰かにとっては、生きるか死ぬかの問題なんだ」
是非、沢山の方に観てもらいたいな、と思います。
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出典、画像参照
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ちなみに、こちらの映画で主演、監督を務めるXavier Dolanも出演しています。
こちらも良かったら。