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なぎさとほのかと二代目問題

[ShortNote:2021.2.3]

(もちころりんっぽい初代コンビ)

 「セーラームーン世代」「おジャ魔女世代」などいろいろありますが、私はプリキュアシリーズ第1作「ふたりはプリキュア(無印)」世代で、今現在でもプリキュアシリーズを観続けているのですが、実は無印の続編である「ふたりはプリキュア Max Heart(MH)」が終わった後しばらくプリキュアから離れていました。その原因が第3作「ふたりはプリキュア Splash☆Star(S☆S)」です。

 まず無印は美墨なぎさ(キュアブラック)と雪城ほのか(キュアホワイト)という2人の女の子が主人公で、性格も得意なことも正反対なコンビがそれぞれのパートナー妖精と一緒にプリキュアに変身して敵と戦う物語で、MHではこの2人に九条ひかり(シャイニールミナス)とパートナーのポルンが加わります。なぎさ派だったのでラクロスのユニフォーム姿のなぎさの人形を買ってもらったり、ジグソーパズルで遊んだり、カードコミューン(変身アイテム)を誕生日プレゼントで買ってもらったと思ったら親が間違えて本物を模した安い偽物(もちろんこれはこれでバンダイの正規品だが「偽物」しか言葉が出てこない)を買ってきたり、思い出がたくさんあります。そんな無印~MHが終わり、キャラクターを一新して始まったのがS☆Sでした。

 後になってインタビューなどを読むとやはり制作陣も無印~MHのイメージを変えたかったらしく、大人の私であればマンネリ化を防ごうとしたんだろうなとか理解できた気はするのですが、主人公の日向咲(キュアブルーム/キュアブライト)と美翔舞(キュアイーグレット/キュアウィンディ)のキャラクターが「元気なスポーツ少女」「おしとやかな少女」となぎさほのかフォーマットだったこと、パートナー妖精のフラッピとチョッピもデザインと性別と関係性が無印~MHのメップルとミップルっぽかったこと、変身アイテムのネーミングも「ミックスコミューン」だったこと、そして何よりもタイトルの「ふたりはプリキュア」がそのままだったことなどからあの頃の私は思いっきり無印~MHと比べてしまいました。

 思い入れのある初代とその後を継いだ二代目なら初代に軍配が上がるのが人情というものであり、結果的に私はS☆Sを拒みプリキュアシリーズからも離れてしまいました。当時父がお土産でくれた文具セットがS☆Sだったことにも不満がくすぶり、咲と舞が表紙を飾るノートに「なぎさとほのかがいい(怒)」みたいな愚痴を書いたりした。2人には今になって本当に申し訳ない気持ちでいっぱいですが、あの時はそう思うしかなかったんだよな……とも思います。「なぎさとほのかがいい(怒)」と感じた無印世代は私だけではなかったようで、おもちゃの売り上げが落ち込むなどプリキュアシリーズとしては苦戦を強いられた作品になってしまったようです。

 この後を受けて始まったのが一気に5人体制になった「Yes! プリキュア5」です。視聴者的に言うと、もしMHの次が5だったらもしかしたら私はプリキュアから離れていなかったかもしれないとずっと思っています。S☆Sは「メインが2人」「凸凹コンビ」「パートナーが男の子と女の子」と初代の幻影を呼び起こすような要素があったからつい比較してしまったわけで、MHの3人から一気に5人に増やされ、パートナーも人間に変身できる男の子2匹にガラッと変えられるともう比べる余地がありません。少なくとも当時の私がどう思うか考えると、これほどまでにフルモデルチェンジされれば前の作品を引きずらず「『プリキュア』という名前を受け継いだだけで全然別のお話なんだな」とすんなり理解できて、その次がS☆Sだったら一度5人(5の続編Go! Go! では6人)を経てるからなぎさとほのかをリセットして観られていたかもしれない。

 そんな「もしも」は起こらなかったのでS☆Sで卒業したわけですが、その3年後飛行機の中で「フレッシュプリキュア!」の前期エンディングテーマ「You make me H@PPY!」を聴いたことがきっかけで「フレッシュ」終盤あたりからまたプリキュアに戻ってきました。この頃になるともう舞台もキャラクターもデザインも1年ごとに一新されるスタイルがすっかり定着し、「来年のプリキュアはどんな感じかな~」という楽しみもでき、そして現在に至ります。

 この「二代目問題」はもちろんプリキュアだけの話ではありません。プリキュアの件に似てるなと思ったのはモヤさま。初代アシスタントである大江麻理子アナ(以下大江ちゃん)は本当に完璧でした。清楚な美人アナなのに体を張るところでは張り、さまぁ~ずを食わず、しかし3人目の出演者としてはっきりと存在感を放ち、セクハラをスマートに受け流し、出演者のバランスを保ち美しく面白い。視聴者からの人気も絶大。

 本人もさまぁ~ずもたびたび言及していますが、そんな偉大なお方の後を継いだ二代目・狩野恵里アナ(以下狩野ちゃん)のプレッシャーはものすごかったと思います。でも試行錯誤を経て大江ちゃんとはまた違う強烈なウザかわキャラを確立したわけです。大江ちゃんみたいになろうとしても彼女は大江麻理子ではないのでなれないし、初代に寄せようとすればするほど逆に違うところばかりが浮き上がってくるSplash☆Star現象が起きてしまいます。その代わりに馬車にすら勝つ足の速さだったり女子アナなのに顔面ストッキング顔面ストッキングをやってしまう体の張りっぷりだったりカンガルーが怖くて号泣やら拝シャンやら橋本真也スタイルやらオリジナルソングやら珍場面を生み出す天然力だったり、大江ちゃんにはない力、もしくは大江ちゃんを超える力を前面に出すことによって見事初代を引きずらない二代目になれたと私は思っています。もしかしたら大江ちゃんはそこまで見据えてキャラが全然違う彼女を後継に指名したのかもしれない。

 あと「相棒」の相棒(ややこしい)も初代の薫ちゃんの次はキャラが180度違う二代目・神戸くんでフルモデルチェンジに成功したと思います。薫ちゃんの人懐っこさも右京さんとの仲良しっぷりもひとかけらも残さないのが大事。変えるなら思いっきり。

 なぎさとほのかも大江ちゃんも薫ちゃんもそうですが、だいたい「初代」は偉大です。そして初代はキャラもなにもかも1から作ることができます。しかし二代目はすでにあるものの上に乗っからなければなりません。初代の作ったレギュレーションを守るのか思い切って変えるのか、これが難しい。「創業は易く守成は難し」という言葉もありますが、天才カリスマ創業者から二代目社長への承継問題に通じるところもあって奥が深いです。

 今なら作品自体のせいではないのに勝手に比べてしまったS☆Sに決着がつけられそうなのでいずれ観ます。S☆S、「改心して味方になる敵側の少女」というフレッシュのキュアパッションなどの先駆けとも言えるキャラがいたり、フォームによって「キュア○○」の名前自体が変わったり(これはもともとS☆Sも無印~MHのように2年体制でやる計画で、その2年目に出す予定だったフォームらしい)、後の作品に受け継がれる要素やS☆Sだけの特徴もあるんですよね。そもそもS☆Sがなければシリーズとして続いていかなかったかもしれない。ただ二代目だったことだけが惜しい。

 それにしてもなぎさとほのかはすごかった。真逆のキャラでも相通じてるコンビってそれこそ青島くんと室井さんも右京さんと薫ちゃんもそうだし大好きな属性のひとつなんですけど、源流をたどればなぎさとほのかに行きつくんですよ。ついでにモノトーン好きなのもこの2人から。私の人生に最も影響を与えた2人と言ってもいい。本当に偉大。

P.S.


 プリティストアのお会計の時ランダムでもらえるシールがキュアイーグレットだったのでこれはやはりS☆Sに決着をつけろというお告げかもしれない。


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