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室井さんがありあまる④
[ShortNote:2021.2.7]
このシリーズを書いたのが9か月ぶりだということにびっくりしています。自分の中では毎週書いてるつもりだった。感覚のズレがひどい。
・室井さんと「真面目」
室井さんのどこが好きって真面目なところなんですよね。真面目な人が好きです。人生で一度も不真面目な人やものがカッコいいと思ったことはありません。
生きているとどこかで「真面目に生きるだけ損」だの「ズルして楽したもん勝ち」だのといった言説が少なからず耳に入ってきます。私は決してそうは思いませんが、そうは言ってもちょっとヘコむな~というときは室井さんを見ます。室井さんは真面目に愚直に生きることを肯定してくれているような気がします。120%何もかも真面目にやれているかどうかと言われると自信はないのですが、まあ一応「真面目」を実践できている方ということにはしておきたい。
ODFのラスト、室井さんが湾岸署のみんなに向かって言った「俺は教えられた。組織の中で生きる人間こそ、信念が必要だと」というセリフが泣くほど好きです。和久さんの言葉を借りるなら「ズルもできないし、嘘もつけない」性質で、信念を持ってしまったが故に苦しんで遠回りをして左遷されて一度は終わりそうになった室井さんが、今までのことを全部踏まえてそれでも「信念は必要だ」と最後の最後に力強く言い切ってくれるのがいいんです。嘘をついてズルもして正直者はバカと言わんばかりに上手く立ち回っていたつもりの人たちは、一時は真面目な人を出し抜いたとしても結局最後は転落して晩節を汚してしまいました。そしてずっと折れずにコツコツ積み上げてきた人が最後に勝利。室井さんの官僚人生、シンデレラ。アリとキリギリスでもいいけど華やかなのでシンデレラ。
もちろん先述の真面目は損理論の人たちも世の中にはいるし、ちょっと脱線しますがヤンキーがちょっと更生しただけですごい偉いと持ち上げる人もいます。でも「いや、更生したヤンキーよりそもそも一度も道を踏み外さなかった人の方が偉いでしょ」と言ってくれる人もいます。一瞬成功したように見える不真面目な人を見ただけで自分をバカらしく思わないでほしい。いかに腐らずとにかく自分の信じた道を歩めるか、そこにその人の価値が表れるのだと思います。
室井さんもそうですが「古き良き時代から来ました。まじめなアイドル、まじめにアイドル」がキャッチコピーのゆっふぃーこと寺嶋由芙さんも同じように好きです。
「強いて言うなら、『まじめな人は損をしがちだよね』って言われることが多くて、でも、真剣に取り組む人が報われる世界になったらいいなと思います」「まじめに納税していたら給付金で助けてもらえるし、まじめに活動していたら助けてくださる方々に出会えた。そういうラッキーな出会いがあると信じて、まじめに生きていくしかないなって思うんです」
もう、真面目最高‼
・室井慎次、「踊る」のリリーフエース説
真面目な話の次はしょうもない話。メンタリティが昭和の中間管理職なのでなんでも野球に例えてしまう。ということで、本部が指揮する捜査を試合に例えるとしっくりくることに最近気づきました。
捜査本部のトップに立つ本部長はピッチャーです。そして映画の中の本部ではすべて室井さんは途中からそのポジションにつきます。つまり中継ぎです。
まずはOD1、先発管理官は新城さんです。が、彼は2回ぐらいで早々にマウンドを降ります。この試合に負けたらとんでもないことになるので、万が一負けた時に責任を取らせやすい室井さんにバトンを渡します。この時点で既に敗戦処理のこともうっすら考慮して上層部(=ベンチ)は新城さんを降ろすんですね。
こうして3回からリリーフした室井本部長は5回あたりで一度ボコボコに打たれます。誘拐犯と接触できそうだったチャンスを逃すくだりです。室井さんはストレートで三振を取りたかったのにベンチがゆるい変化球を投げてゴロで打ち取れってうるさいから仕方なくその通りにしたらファーストがエラーして出塁を許すみたいな展開になります。高校時代の牛島和彦投手みたいに「投げてんのは俺や、黙って見とけ」と言えれば良かったんでしょうが、それができないのが警察組織です。
ここで打たれてさすがの室井さんも落ち込むものの青島くんに励まされたこともあり、6回からはまた立ち直ります。グラウンド整備を挟んで心機一転、というあれです。そしてどうにか勝利をもぎ取るのですが、青島くんが刺されてしまうという多大な犠牲(死んでないけど一応)を払った上での勝利でした。最後のアウトをなかなか取れなかった、みたいな感じ。
次はOD2。先発は沖田さん。7回までがんばるけどここで相手に満塁ホームランを打たれます。しかもその点の取られ方もエラーでランナー出してイライラしてワイルドピッチして塁を埋めちゃって最終的に打たれる、みたいな最悪の形です。沖田さんが高圧的すぎて野手の士気も下がってしまうという悪循環が起こっています。
ここでたまらず沖田さんを降ろし、緊急リリーフしたのが室井さんです。OD2の室井さんはクローザーに近い。ずっと地下のモニター室に閉じ込められてはいましたが、あるかもしれない登板機会に備えて黙々と肩を作っていたというところでしょうか。あのモニター室はブルペンだったのかもしれない。
8回のマウンドに上がった室井さんは見事に捜査員たちをまとめ上げ、事態を収拾します。三者連続三球三振ぐらいの鮮やかさ。これ以上ない火消し。ついでにいうとこれは後輩である沖田さんの負けを消す奮闘でもあります。
そんなリリーフエースもOD3では一度完全にグラウンドから退き、ベンチ側にいました。しかしODFで彼は再びマウンドに上がることになります。普通はありえない警察庁長官官房審議官としての捜査本部長。室井さんに本部長をやらせた後責任を取って辞職させるというシナリオの上での登板である以上、これはイレギュラーであり今後彼が再び現場に出ることはないであろう、と考えるとまさに引退試合です。「6613(=むろいさん)」ナンバーの真っ黒な日産・フーガはまるでリリーフカー。
ここで室井さんはこれまで彼が培ってきたやり方を惜しみなく駆使して命令を下し、捜査員を動かし、真下勇気くんを無事奪還します。まだ現役でいけるじゃん! と思わせるようなキレキレぶり。引退試合でホームランを打った井口監督(ロッテ)や阿部慎之助二軍監督(巨人)やこないだの藤川球児さん(阪神)のような。でもこんなキレッキレでもすぱっと引退してしまうという潔さがまたカッコいい。「久しぶりの室井さんの命令、しびれました」という青島くんのセリフがそのカッコよさを物語っているかのようです。
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