月報:2024年8月
暑い暑いって言うけどそりゃ夏は暑いもんだろうという気持ちがある。ヘッダーは人の家の猫。20歳くらいらしい。
✅今月したこと
・帰省するも甲子園を観ることしかしない
お盆に帰省したんですが、「元禄太平記」の後編を観ないまま行ってしまうと沖縄でも討ち入りのことしか考えられない人間になってしまうと思ったので帰る日の午前中に駆け込みで観に行って無事満願成就したのはいいとして帰ったら帰ったで甲子園ばっかり観て全然家から出られなかった。出たとしても車のラジオで聴いてた。京都国際も関東第一もよかったけど大社もよかったですねえ。早実戦は語り継がれると思います。リアタイできてよかった。内野5人シフトってガチの試合で初めて見たよ。
📺今月観たドラマ
・元禄太平記(総集編)
1975年度のNHK大河ドラマ。の総集編。これを観るために二週連続放送ライブラリーに行く人になってしまった。メインは忠臣蔵でおなじみ赤穂事件で、主役は忠臣蔵で(それ以外でも)悪役として描かれがちな側用人・柳沢吉保。この柳沢がまあめちゃくちゃよかった。怜悧で冷徹な野心家×34歳の石坂浩二。甲斐峯秋とか、最新版というか現在進行形なら真行寺会長とか、恐ろしい権力者系石坂浩二が何よりも好きなので嫌いなわけがない。ヤング峯秋さんって感じ。水も滴るいい男でとにかく色気が凄まじい。なんで権力者って色っぽいんだろう。威厳が色気をブーストするのか。ちなみにこの前年がありがとう第3シリーズで、翌年が犬神家です。風邪引くって……。
私はなぜかいつも悪役に感情移入しがちなので、悪役を主人公にするという構造そのものも好み。私のために用意された作品かと思った。主人公にしてもらうことによって権力者の仮面の下に隠れた柳沢の迷いとか、情とか、彼なりの信念とかがたっぷり描き出されるのでより柳沢にずっぽりハマってしまう。そして何より忠臣蔵のヒーロー・大石内蔵助と柳沢が若い頃に会ったことがあるという改変が効いている。切腹直前の大石と柳沢がふすまを隔ててしゃべるシーンが本当に良すぎるのでちょっともう横浜まで行く用事のある人放送ライブラリーに行って観てきてほしい。いやー本編も観たい。しかしこの作品、あの時代のドラマあるあるとして映像がNHKに一部しか残ってなかったりする。なかなか再放送されないとかソフトがプレミアってるとかじゃなく、そもそも映像が散逸している。レベルが違う。現時点で発掘されてる話だけでいいから観せてくれないかな……もっと柳沢がほしい……。
総集編でガーッと一気に見ると声のトーンの変化が圧巻。後になると重厚でしたたかな蛇のような、それこそ峯秋さんで聞き慣れたあのダークなトーンになります。最後まで観た後に最初に戻るとなんだか柳沢が可愛い。それくらいの変化量。この現象どっかで経験したな……と思ったら白い巨塔の財前だった。いや、あなたはどちらかといえば東教授……。
・古畑任三郎(の残り)
実家にあるデアゴスティーニのDVDコレクションでFOD未配信回を。「再会」は泣いた。反対に犯人を自殺させてしまう「すべて閣下の仕業」は関下の死をちゃんとくらっている古畑さんがかわいそうでニコニコしてしまった。「黒岩博士の恐怖」が配信されてないの、ディズニー版白雪姫が映るから?でもそれだったらカットできそうなシーンに思えるけどな。
📖今月読んだ本
・スリジエセンター1991/海堂尊(再読)
世良先生のその後はなんとなく覚えてるから読んだことは確かなんだけど、天城が最後ああいうことになるのは覚えてなかったから怪しい。あのラスト忘れることある?真行寺会長もここでやっと出てきますが、もう完全に石坂浩二でしか再生されない。原作の会長はなんか味方してくれたけど、石坂真行寺は佐伯病院長とケンカしてるっぽいのでどうかな。そしてニノ天城はああなるんでしょうか。桜宮サーガの映像化はだいたいわりと激しめに改変されてるのでたぶんならないと思うけど。猫田さんなんか医者になって海外行っちゃったし。
・ゴシック&ロリータ語辞典 ゴス・ロリにまつわる言葉をイラストと豆知識で甘くデカダンに読み解く/鈴木真理子
「語辞典」シリーズ。ゴスとロリータの2つのジャンルの用語を解説。ロリータ、着ないけど見るの好きな服の筆頭。BABY,THE STARS SHINE BRIGHTのサイトとかブクマしてる。YouTubeで見るのも好き。クラロリくる実さんとか。ロリータってよく「着たいけど似合わなくて……」みたいな問題が持ち上がってるように思うけど、似合う似合わないじゃなくてこれはもう服に自分を合わせるジャンルの服なのかもしれないと「人形になりたい」のくだりを読んだ時に思った。人間のままで着ようとするから似合わないとか悩むのであって。骨格診断とかパーソナルカラーとかで自分で自分をがんじがらめにしてる人ほど着たらいいジャンルなのではないか。すみません適当なこと言いました。
・ANA857便を奪還せよ 函館空港ハイジャック事件15時間の攻防/相原秀起
これのせいで王様のレストランの第10話と最終話が1週ずつずれ込んだことで知られる1995年の全日空857便ハイジャック事件のドキュメント。優秀な銀行マンだったのに愛人を持って転落していった犯人の「麻原彰晃を釈放させて飛行機に連れてきて刺し違えて死ぬ」という荒唐無稽なプランや加藤登紀子さんのバンドメンバー・告井さんの決死の通報、この本にはないけど「月曜から夜ふかし」でも取り上げられた中継間違い電話事件など、トピックに事欠かない事件。出てくる人が警察サイドも報道サイドもみんなプロでカッコいい。なんとなく飛行機の中で読むわけにはいかないと思ったので、帰省前に読みました。乗ったのJALだったけど。
・まり~んずかん2024 千葉ロッテマリーンズ 選手の図鑑/303BOOKS
藤原くんと唐川さんは卓球がうまいのは有名な話(私の中だけかもしれない)。ダブルス組んでみてほしい。あと、すっかり「マーティンの弟」に反応するタイミングを逸した感があるのですが、エモいよね……。お兄さんのバットと奨吾さんのバッテ使ってるところとか。
・日本文房具クロニクル/日本懐かし大全シリーズ編集部
日本の文房具の歴史。今でもあるロングセラーから今また売ってほしいものまで。チームデミが好きだ。
・2004年のプロ野球 球界再編20年目の真実/山室寛之
日本プロ野球史上最も大事な年のひとつ、2004年。スポーツドキュメンタリーというより経済ドキュメンタリー。WOWOWのドラマのよう。今から考えると1リーグにならなくてよかったし、ダイエーとロッテが合併しなくてよかったし、ライブドアに新規参入させなくてよかったし、いい方にいったなと思うけどその当時の経営陣や選手やファンは気が気じゃなかったでしょう。しかしナベツネはどうして「たかが選手」と言ってしまったのだろう……。
・沖縄Dee級読本/DEEokinawa
沖縄版デイリーポータルZみたいなサイト「DEEokinawa」の公式本。このサイトのすごいところは編集部メンバーが全員県外出身者なところ。ちょっと違う話だけど、地方で移住推進とか活発に活動してる人って他地域出身者が多かったりしますよね。
実は12年前の本ですが、なぜか紙の方の中古がプレっている(Amazonで19,677円)ためKindleで買いました。この本に収録されているネタで個人的に好きなのは「インペリの謎にせまる」。あー確かに言われてみればこうのいけ(沖縄の理容室チェーン)の看板に書いてあるインペリ!という「目に入ってはいるけど調べようとも思わなかったもの」の目の付け所がいい。「水につけておくとウ○コに!?」の「雑学の検証をするテレビ」とはトリビアの泉のことです。高校野球ファンとしては「高校野球の試合時間中は本当に沖縄の経済がストップするのか」が大好き。2010年の興南の春夏連覇、私は中学生でしたが、どこに行ってもソワソワザワザワしていて楽しかった。またああいう雰囲気を味わいたい。
「編集ウラ話」でやんばるたろうさん(本田さん)が書いている「琉装でとある施設に行った」というのはこれのことでしょうか。そうだとしたら本に載せようとして「いい大人なんだから、駄目って事は分かるよね?」と怒られたと考えると面白すぎる。この記事は続編も好き。
・私のバカせまい史 公式資料集/「私のバカせまい史」製作委員会監修
横溝ファンはスケキヨの足史やスケキヨの目史でお世話になっている「私のバカせまい史」 の公式本。FODで配信されていない回も載っているので助かります。
個人的にこの番組で好きなのはテレビ番組の歴史系なので、「クイズ番組第1問史」がお気に入り。フジテレビ最古のクイズ番組「バースデー・プレゼント」(1959年3月9日)の第1問、気になる。あと古畑好き的には「時限爆弾解除二択史」が収録されていて嬉しかった。「若者の○○離れ史」は風刺がきいてて面白い。「若者の暴力団離れ」はむしろいいことだろ!研究長のおっしゃる通り、そろそろ「『若者の○○離れ』離れ」が来てもいい頃。ハラスメントハラスメント(なんでもかんでもハラスメント呼ばわりするハラスメント)的な。
・忠臣蔵入門 映像で読み解く物語の魅力/春日太一
「元禄太平記」を観てあれだけ討ち入りのことばっかり考えてたらそれは忠臣蔵に興味持ちますよ。入門したくなりますよ。ということでこれ。「松の廊下で浅野内匠頭が吉良上野介に斬りつけて大石内蔵助with赤穂浪士が討ち入りした」くらいしか知らなかったのであのシーンやこのシーンって名前ついてたんだ……などの知識を得られた。でも「山科の別れ」や「南部坂雪の別れ」という名前を知らなくても観ると引き込まれるし心に残る場面だったのでやっぱりすごい。物語としての力が強い。そして当然元禄太平記も忠臣蔵モノですので取り上げられています。柳沢は成り上がり故に主君や故郷を奪われた者の気持ちがわからない。切ない。改易された藩の武士に綱吉が襲われそうになるシーンを思い出した。どうでもいいけど、忠臣蔵の話を真夏に読むことに違和感を覚えてしまうのも日本人的な感覚と言っていいんでしょうか。
・将軍側近柳沢吉保 いかにして悪名は作られたか/福留真紀
大学病院とハイジャックとプロ野球とロリータと狭い歴史と沖縄と忠臣蔵、みたいな8月を柳沢に締めていただきましょうということで。こっちは史実柳沢。肖像画を見た学生が「カッコいい人かと思ってたのに」とガッカリした話ちょっと笑った。いや、いくらなんでも本当に石坂浩二並みだとは私も思ってないよ。石坂浩二みたいな顏してるのは歴史上石坂浩二しかいないってわかってるよ。それはともかく、実際は新興大名なのでちゃんと身の程をわきまえて慎んで家臣の教育もちゃんとしてた人だったと。まあそうだよね。成り上がりは調子に乗ってたらちょっとしたことで陥れられるでしょうしね。それなのになぜか責任を押しつけられて存命中から早くも悪役レッテルを貼られてしまった。かわいそうだ。それに現実世界に「悪役」などいない。芝居や小説なら「悪役」を割り振られたキャラクターはいるけど。だから現実で悪役扱いされてる人がいたら本当にそれだけの人なのかなって疑うことは大事だと思っています。それこそ上で名前出したけどナベツネとか。いいことだけする人がいないのと同じように悪いことだけする人もいないから。
でも元禄太平記の石坂柳沢もポジショニング的には悪役だけど権力をほしいままにして好き放題やる男じゃなくて、あくまでも綱吉の意向に従って綱吉の理想を実現しようと尽力した人だったのでこれは実像にちょっとは近い描写だったのかなと思いました。いや、史実柳沢にも思い入れできてきちゃったな。大河ドラマとか歴史物フィクションの醍醐味ってこれですよね。