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9月のことを何だと思っているのか?(文句ではありません)

 大野雄大は9月26日生まれである。私は推しができると推しの誕生月のことを大好きになってしまい、その月のことを歌った曲を探してしまうのだが、「9月の曲」についてはずっと前からあることを思っていた。

 9月の歌、9月のこと歌わながち。(日本語がおかしい)

 とにかく「過ぎ去りし夏を思い出してあの頃はこうだったよなぁと懐かしむ」みたいな歌が多い。気がする。いや気持ちはわかる。私も四季の中で一番夏が好きなので、「夏の範囲」にも厳格になる。8月31日を過ぎればいくら晴れていようが暑かろうがそれはもう「夏」ではないと思っている。9月の暑い日は夏もどきである。夏もどきであればあるほど夏を忘れられず、「夏楽しかったな……もう1回7/1になったりしないかな……あぁ夏……」と言っているうちに9月中旬ぐらいまで終わってしまう。大好きなテレビ番組が終わって、次の番組が始まってもどうしても「前のやつの方が面白かった……」という目でしか見られないようなものだ。


 しかしそれでは9月の立場がないではないか。9月には9月の良さがあるのではないか。9月なのに9月じゃない時の話ばかりするなんて、大野がかわいそうだと思わないのか(?)。
 大野のことはいいとして、9月の歌である。


September/アース・ウインド・アンド・ファイアー

 「9月の歌」と聞いてパッと思いつくのはこれではないだろうか。しかしこの曲、曲中の時間軸は12月である。9月21日に出会ったカップルがクリスマスに9月のことを回想するという変則9月ソングなのだ。先ほど「9月の歌は9月のことを歌わない」と言ったが、これはちゃんと9月の話をしているのに今は9月ではなく12月という大変ややこしいパターンである。

 「remember」と「September」で韻を踏んでるの、好き。


September/竹内まりや

 9月の歌、邦楽代表。これが「幸せだった夏(思い出)と寂しい9月(現在)を対比させる」タイプの代表でもある。曰く、9月は「さよならの国」であり「一番さみしい月」。あの竹内まりやがそう言っているのでこれは正しいであろう。が、一番さみしい月に生まれておいてあれなのかよという感じで大野が頭をチラつく。

 それと「トリコロールの海辺の服」と「辛子色のシャツ」で色彩的にも夏と9月の対比をしているところが素敵。


湘南SEPTEMBER/サザンオールスターズ

 我が軍、サザンオールスターズ。余談だがサザンの曲で唯一「湘南」という言葉をタイトルに冠した曲である。湿っぽすぎず淡々としすぎてもいない9月の質感を絶妙にメロディに乗せた大名曲。これも夏を懐かしむ(ダジャレではない)タイプ。

 桑田さんはラジオで「どちらかといえば人で溢れた真夏の浜辺というより誰もいなくなった夏の終わりの海を描く方が好き」というようなことを言っていたが、そういう意味で言えば一番得意なのは(夏を惜しむ時期としての)9月なのかもしれない。


 「好きだと言ったまま夏の日は逃げてゆく」「愛の刻印(しるし)はもう帰らぬサマーホリデイ」「夏の運命(さだめ)に月が泣いている」、過ぎ去った夏の恋を悼む言葉がこれでもかというくらいぎっしり詰まっている。私だったら「うまいこと思いついたしこれとこれは次の曲のために取っとこう……」とケチるようなキラーフレーズばかりである。すごい。

 ちなみにこの曲も「September」と「So Tender」で韻を踏んでいる。September、踏みやすいのだろうか。


すみれ September Love/一風堂

 今度こそ「9月に9月の話をする」歌の代表。ここでの9月は「あやしい季節」と評されている。曲調もどこか妖しげで大人っぽい。ひと夏の恋とは違うのだよという感じである。

 すみれは春の花ではあるが、その可憐だけれどどこか色気のある紫色は9月によく似合う。個人的にこの曲が使われた資生堂のCMも好き。ブルックのすみれ色。9月のイメージカラーはすみれ色でもいい。このヒット曲があるので「すみれは9月の花じゃねえだろボケ」みたいな文句は言われないと思う。

 どうでもいいがタイトルの語呂があまりにも良い。


ざっくり分類


A.夏を懐かしむタイプ
・Lady September/TUBE→少女の頃は夏が似合ってたけど今は大人だね、という内容。女性の成長を季節の移り変わりになぞらえている。

・September Blue Moon/松任谷由実→「過ぎた夏の日々に悲しいこと考えたの」。寂しい季節としての9月。

その他…九月の色/久保田早紀、September/aiko、SEPTEMBER MOON/矢沢永吉、せぷてんばぁ/クレイジーケンバンド、9月の海/スターダストレビュー

B.9月の話をするタイプ
・セプテンバーさん/RADWIMPS→「君が笑い出す そこに夏はいなくても」。相手のことが好きなのは夏のせいなんかじゃない。

・Wake Me Up When September Ends/グリーン・デイ→9月が終わったら起こしてくれ。

その他…九月になったのに/RCサクセション、サファイアの9月の夕方/松任谷由実

C.他の季節の話してるけどそれが夏だけじゃない
・船を出すのなら九月/中島みゆき→「人は皆 冬の支度で夢中だ」。9月の歌で冬に言及されるの初めて見たのでびっくりした。9月を夏と冬の狭間にあるものと捉えているところが斬新。さすが中島みゆき。「海を見飽きた頃の九月」「冬を見ている夜の九月」。人が去った後の九月の海に対する眼差しと、そこにしかない美しさ。


 そういうわけで9月の歌をいろいろ聴いていたわけだが、なんだか美しいバラードが多すぎる気がする。真夏をテーマにしたバラードとはまた少し違う、侘しいような悲しいような佇まいがある。夏に置き忘れたものなど個人的にはないはずなのに何か忘れてきたような気持ちにさせられてしまう。今まさにユーミンの「9月には帰らない」を聴いて若干泣いている。あのカモメの鳴き声は何……ユーミンはやはり天才……。


 しかしながらあの大野雄大の誕生月であることは動かしがたい事実なので、ぜひ「9月も楽しいよ! 悲しくないよ!」みたいな歌ももっと欲しい。イベントをテーマにするのが一番いいのだろうか。9月といえば……お月見? いやあんまり「うぇーい月見ー!」というテンションで行う行事じゃないし。動物愛護週間とか。ダメか。そういうところは各自考えて作詞作曲してみていただきたい。

 そんなことより一番の問題は今は9月でもなんでもなくまだ5月だということである。9月に9月の話をしていないという問題提起がブーメランになってしまったが、まあ9月とは9月以外にありて思うものなのかもしれない。

▼9月プレイリスト


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