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個人住民税を地方税法からまなぶ④一括で天引きされる場合 #0054/1000

前回のつづきです。

給与をおもな収入にしている人は、市町村が決定した1年分の住民税年税額を、6月から翌年5月までの分割払いで給与から天引きされることが地方税法に記されていました。

では、その6月から翌年5月の間に、退職したらどうなるのでしょう?

そのことも、地方税法でちゃんと記されています。

第321条の5の第2項。

2 前項の特別徴収義務者は、前条の規定によりその者が徴収すべき給与所得に係る特別徴収税額に係る個人の市町村民税の納税義務者が当該特別徴収義務者から給与の支払を受けないこととなつた場合には、その事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額(前項の規定により特別徴収義務者が給与の支払をする際毎月徴収すべき額をいう。以下この項、次項及び第三百二十一条の六第三項において同じ。)は、これを徴収して納入する義務を負わない。ただし、その事由が当該年度の初日の属する年の六月一日から十二月三十一日までの間において発生し、かつ、総務省令で定めるところによりその事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額を特別徴収の方法によつて徴収されたい旨の納税義務者からの申出があつた場合及びその事由がその年の翌年の一月一日から四月三十日までの間において発生した場合には、当該納税義務者に対してその年の五月三十一日までの間に支払われるべき給与又は退職手当等で当該月割額の全額に相当する金額を超えるものがあるときに限り、その者に支払われるべき給与又は退職手当等の支払をする際、当該月割額の全額(同日までに当該給与又は退職手当等の全部又は一部の支払がされないこととなつたときにあつては、同日までに支払われた当該給与又は退職手当等の額から徴収することができる額)を徴収し、その徴収した月の翌月十日までに、これを当該市町村に納入しなければならない。

ここも1項目が長い!

つまりは、個人(納税義務者)が、会社等(当該特別徴収義務者)から、給与の支払を受けないこととなった場合(退職など、休職も含まれる)、の説明です。

その場合は、「その事由が発生した日の属する月の翌月以降の月割額は、これを徴収して納入する義務を負わない」とされています。

つまり、退職の場合退職した月の翌月以降のぶんは、会社は給与天引きする義務がないですよ、ということです。

とはいえ、給与計算期間の締めが月末で、給与の支払日が翌月の場合、翌月に給与の支給はあるので、そこまでは給与天引きしている会社は多いと思います。

ただし、もう給与が支給されなくなったあとは、支給するものがないのですから、給与天引きもできません。

「これを徴収する義務を負わない」のは当たり前ではないか、と思いますが、実は、「ただし書き」があるのです。

ここが、地方税の情報のなかでも、特別級に知っておくべきところです。

では、なんと書かれているか。

まずは、給与の支払を受けないこととなった(退職など)のが、6月1日から12月31日までの間の場合。

個人(納税義務者)が給与天引きでおさめたいと申し出た場合は、残りの月割額(最後に天引きされた月のぶんより後の残りの住民税)の全額を天引きし、翌月10日までに市町村に納めなければならない、となっています。

では、給与の支払を受けないこととなった(退職など)のが、翌年1月1日以降4月30日までの場合はどうなるか。

その場合は、その年の5月31日までに支払われる給与または退職金から、本人の申し出がなくても、残りの月割額全額を天引きしなければならない、月割額全額のほうが給与や退職金より高額の場合は、引ききれる額を天引きしなければいけない、となっているのです。

そして、会社は、その個人(納税義務者)の名前と、一括で天引きした住民税の金額を、市町村に届け出しなければならない、となっているのです。

1月から5月までに会社を辞めたことのある人は、住民税がたくさん引かれて手取り額が大幅に減っているのに、がくぜんとした人もいるのではないでしょうか?

それは、こういう仕組みが地方税法で決められているからなのでした。

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