見出し画像

保険料負担、そもそもなぜ企業も?健康保険の会社負担には理由があった

現在、人手不足により、短い時間で働いている人に労働時間を伸ばしてほしいニーズがある一方で、今後の人口減少による社会保障の収入源の問題を解決しなければいけないという課題があります。

それを政府は、健康保険と厚生年金の加入基準をゆるめ、ひろげる方向性で解決しようとしていますが、その一方で、個人の負担をやわらげるべく、個人が負担すべき保険料を会社が負担することを検討しているようです。

会社員の健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、社員個人が負担しつつ、会社も個人負担以上の額を負担しているのですが、では、どうしてそのような制度になっているのでしょうか?

個人と会社でそれぞれ保険料を負担することになった理由は、健康保険にあったことが、厚生労働省の資料で記されています。

第20回社会保障審議会年金部会 資料
第20回社会保障審議会年金部会 資料

つまり、病気がたとえ業務外であっても、労働条件や工場設備等の自由がかかりやすい素地をつくる一因だったと考えられたり、被保険者の健康保持やすみやかな傷病の回復は、労働能率の増進等をもたらすことで事業主にも利益があるため、健康保険という制度には、会社もある程度負担すべき、ということです。

労使折半というかたちで半分ずつになっていることについても、後づけの理由だという指摘はありますが、このように説明があります。

・全病傷事故のうち、業務上の事由によるものは4分の1で、業務外の事由によるものは4分の3
・業務上の事由による傷病に関する費用は、全額事業主負担とする
・業務外の事由による傷病に関する費用は、ドイツ疾病保険の例により、事業主3分の1・被保険者3分の2の負担割合で負担することとする

つまり、以下の計算式ということです。

事業主  1/4×1+3/4×1/3=1/2
被保険者 1/4×0+3/4×2/3=1/2

こう説明されると、なんとなく、健康保険の保険料を会社が一部負担するのは納得できるような気がします。

とはいえ、日本には労災保険という、業務上のけがや病気の療養を負担してくれる、全額事業主負担の保険があるので、最初の4分の1にはすこしもやっとするところはありますが。

ただし、健康保険の理由はわかっても、厚生年金については記載がありません。
厚生年金も、もともとは戦中に企業の福利厚生からはじまったものなので、一部が会社負担なのは全く理由がないことではないと思います。
ですが、健康保険も厚生年金も、ずいぶん前の考え方がそのまま前提をとして引き継がれ、いまの状況でどうあるべきか、そもそもが考えられずに負担の増減だけが語られているように思います。

国民健康保険や国民年金より手厚い健康保険や厚生年金は、その適用が拡大されることで雇われるものの生活を安定させる効果はあると思いますが、それと、保険料の負担は、別の問題として検討できます。

税金と社会保険料をわけて考えず、ひとまとめにすることで、徴収の運用費を減らし、それをあてるのもそのひとつの案です。

どんなこともそうですが、いまの形式を当たり前として枝葉を検討して負担をどこかに押し付けるのではなく、そもそもから考えて、動けるようになりたいものです。

いいなと思ったら応援しよう!