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すべての従業員が厚生年金に入る日がくる?~第4回社会保障審議会年金部会資料より

本日開催された、厚生労働省の「社会保障審議会」のうち年金部会で、今後の年金制度をどう変えていくかのビジョンがいくつかしめされました。

そのうちもっとも大きい変更となる案は、すべての従業員が社会保険(健康保険(40歳以上は介護保険も)・厚生年金保険)に入るというもの。

これがどのくらいすごいことかを、むかしを振り返って確認したいと思います。

これまでの社会保険制度

健康保険(40歳以上は介護保険も)・厚生年金保険のいわゆる社会保険は、むかしは、正社員か、ほぼ正社員なみの働きかたをする人が加入対象でした。

それは、むかしは男性が正社員として働くことで社会保険に入り、女性は結婚して男性に扶養されるものとして社会保険に入るというかたちが多かったゆえ、成り立っていたとも言えます。

この場合、男性は老後の年金として国民年金にあわせて厚生年金がもらえますが、女性は国民年金のみとなります。

それは、被扶養者である配偶者の入る年金は、あくまで国民年金だけだから。

ですがそれでも、結婚する人が多数で、老後も同じ世帯ですごす人が多数だった時代は、ふたりの年金をあわせればよいので、世帯としてはなんとか成り立っていました。

一般的に男性より女性のほうが長生きですが、そうした場合も、男性が亡くなったあとは女性は遺族厚生年金がもらえるので、世帯収入がひとり分になるわけではなく、生涯を支えることができたのです。

ですが、時代は変わりました。

結婚するのは当たり前ではなく、老後までつれそうことも当たり前ではありません。

また、夫婦のどちらかは正社員である、ということも当たり前ではありません。

これまで世帯で帳尻のあっていた年金制度は、個人単位で考えていかなければならなくなってきたのです。

それとともに、現在高齢者がもらっている年金は、現役世代が払う社会保険料からまかなっているのですが、その現役世代の人数がどんどん少なくなってきて、これまでの仕送りのスタイルでは、年金制度を支えられなくなってきました。

そこで、社会保険は、これまで正社員か正社員なみに働く人だけだった対象を他の人にも広げ、個人単位でそれなりの額の年金がもらえるように、また、年金制度を支える保険料を払う現役世代を増やしていく方向で変わっていくことになりました。

いまの社会保険制度

どのように変わってきたかというと、これまで週30時間以上働く人が対象だったのを、週20時間以上にまで対象を拡大しました。

とはいえ、ある程度のお給料があり(年収106万円以上)、ある程度長い期間働き(1年以上)、学生は対象外という条件で、まずは財政的体力のある従業員501人以上の企業、というところからです。

「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)
及び「働き方に関するアンケート調査」(労働者 Web 調査)結果 より

財政的体力が条件となるのは、社会保険の保険料は、労使折半といって、従業員だけではなく、会社側もほぼ同じ金額を払うことになるから。

それゆえに、労働者がもらえる年金も増えるということになります。

その会社側の条件は、ゆくゆく大企業だけではなく中小企業にもひろげますよ、という事前アナウンスのうえ、昨年2022年10月に従業員101人以上の企業にまで拡大されました。

また、従業員側も条件が雇用見込み期間1年以上だったのが、2ヶ月超まで拡大されました。

来年2024年には、これが51人以上にまで拡大される予定です。

これからの社会保険制度

本日の審議会の資料では、「働き方に中立的な社会保障制度等の構築」として以下の案が提示されています。

第4回社会保障審議会年金部会 2023年5月30日
資料3「被用者保険の適用拡大」

現在社会保険加入とならない、週労働時間が20時間未満の従業員、会社規模が50人以下の会社の従業員、また一部の個人事業所に勤める従業員についても拡大していくべき、という内容です。

また、複数の事業所で働くマルチワーカーについても、合算すれば社会保険に加入している労働者なみに働いている人については対象とすべきという意見もあります。

また、従業員ではないフリーランスにむけての目配りも見えます。

現在は、雇われている人(社会保険加入/国保国民年金加入)、雇われていない人(国保国民年金加入)と分類されている構図が、すべて社会保険加入に向けて検討されていく流れを感じる内容となっています。

アイキャッチは画像生成AIbing image creatorで作成しました。
プロンプト:社会保険、老若男女

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