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2015年から義務化されたストレスチェック、今後は義務対象を拡大?ほかに課題も

社員に行う「ストレスチェック」は、働く人たちが心の健康を保つため、会社がストレスによる問題を早期に発見し対処することを目的としており、2015年より50人以上の事業場では年に1回の実施が義務とされています。

社員は、定期的に自分のストレスの状態を確認し気づくことで、早めにケアなどの対策をとることができます。
会社側は、社員のストレスレベルを知ることで、働きやすい環境を整えることができます。

社員にとっても会社にとっても良い制度のようですが、肝心なのは、調査結果だけではなく、その後「どうするか」。

調査結果をふまえた集団分析や職場環境改善こそがポイントとなりますが、そこまではとても手が回らない、という会社も一定数あります。

このストレスチェックについて法律で定められている状況を表にすると、以下の通り。

この表の「努力義務」となっているところ、
・50人以上の事業場の「集団分析・職場環境改善」
・50人未満のストレスチェック実施
こそが、いまのストレスチェックの問題となっているところです。

ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 第6回資料

厚生労働省は、「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」で、今後の方向性について話し合いをすすめています。

今回は、この資料から、上に記した問題2つの今後の対策について見ていきましょう。

1.50人以上の事業場で実施はしてるが「集団分析・職場環境改善」ができていない

資料では、以下のとおり、ストレスチェック実施後、集団分析も行なった事業場は7割程度で、3割程度が未実施となっています。

調査によれば、集団分析を実施していない会社は、その理由として、「集団分析の必要性を感じなかった」とするところが多いとのこと。

とすると、その「集団分析の必要性」がそもそも周知徹底されているのだろうか?という疑問が生じます。

集団分析はそもそも、どこか改善が必要な場所をあぶり出すために行なうもの。
集団分析を行なう段階では、職場に問題があるかどうかの答えは把握できていないはずで、よって、「必要性を感じない」という回答に疑問符がつくからです。

また、集団分析は、それによって明らかになった問題を改善する活動とセットで行なう必要がありますが、中小企業の100人前後くらいの会社では、集団分析だけやって、職場環境改善を行わないパターンが多く見受けられるとのこと。

集団分析だけだと、管理職が神経をとがらせたりするなど、むしろマイナスが生じているとの指摘があります。

検討会の資料では、
「体制や現状を考えると義務化するのは困難。義務化だけが方策を進める方法ではない」
という意見もありますが、やはり、一体的な運用の必要がある以上は、ストレスチェックを義務化するなら、そこまでも義務化する必要があるのではないでしょうか?

2.50人未満の事業場で未実施なのは、それでいいのか?

50人未満の事業場ではストレスチェックは「努力義務」ですが、実際自発的に行なっている事業場が、3割強あります。

令和3年度厚生労働省委託事業「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業」では、ストレスチェックが社員本人に好影響があるという結果が示されています。

ストレスチェックを受け、個人結果をもらったことを高評価している人が7割強。
医師面談(対面)を受けたことを高評価しているのが5割強。

こう見ると、「50人」という区切りでストレスチェックのやる/やらないを分けてよいのか?という問題が出てきます。

50人で義務化のラインを変えているのは、50人未満の事業場だと、費用も手間もなかなかけにくいから、という理由があるからでしょう。

実際、外部のスレとレスチェック関連サービスを利用すると、1人あたり数百円から1,000円程度の費用がかかると出ています。

健康診断についても義務となっており、そちらは会社が費用を負担していますが、それは医療機関を受診する必要があるから。

メンタルチェックに関しては、調査は医療機関にかかるのではなく社員がアンケートに回答するものなので、厚生労働省のほうでもっと主導権をにぎって広げることは可能です。

現に、外部サービスに依頼しなくても、厚生労働省で、集団分析までを含むツールが公開されています。

このプログラムが、集団分析をAIを用いて解析するなどして会社の負担を軽減するものになれば、50人未満の事業場でも費用と手間をあまりかけずに実施できるため、50人の壁は低くなります。

また、50人以上で集団分析以降ができていない会社にも、良いサポートとなります。

産業保健活動は、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターなどの公の機関もあります。

ほか、民間でも、強い思いを持って、会社をサポートしてくれる産業医の先生も多く存在します。

来年は、2015年の制度開始から10周年の節目。

皆が安心して働けるよう、ストレスチェックの活用がさらに進むことを願います。

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