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深夜労働の割増賃金一部なくす?副業兼業ルールを守れるように?経団連アイデアから

2024年9月17日、経団連は2024年度の規制改革要望を示しました。

「デジタル」「環境」「人の活躍」「新産業の成長」を柱に53項目が盛り込まれています。

このうち、働くことに関する2項目を取り上げて見てみましょう。


1.深夜労働の割増賃金を一部なくす

これは、育児・介護をしながら働いている人が、日中は中抜けすることもあるなかで家族が眠っている夜間にお仕事をしたいというニーズがあるという前提で、「現行法では、深夜労働規制が適用されており、深夜残業を認めにくい状況にある」ことから、ある一定条件で「深夜労働に対する割増賃金規制を適用しない」ことを求めるものです。

これは「更新・再提出」の要望なので、今回がはじめての提案ではありませんが、かなり納得しにくい話だと思います。

たしかに、ただ適用しないというわけではなく、
・各月の深夜労働の回数制限を設ける
・深夜の勤務時間をあわせて1日の労働時間が8時間を超えた場合は、通常どおりの深夜割増賃金を払う
という制約をつけたり、深夜労働時間の時間数はそのままで「就業規則等により割増賃金規制の対象時間を数時間後ろ倒しする」というような案もあります。

ですが、そもそも
「現行法では、深夜労働規制が適用されており、深夜残業を認めにくい状況にある」
というのが、「深夜労働だから認めにくい」のではなく、「深夜割増賃金を払うことになるから認めにくい」というところがズレているのでは?と思います。

健康に悪影響があるから、深夜割増賃金があったり、健康診断が義務付けられているわけです。

それは、夜間に就労ニーズがあろうがなかろうが、人間が生きている限りかわりません。
就労ニーズに応えようと会社が思うのであれば、健康に悪影響があることへの配慮としての割増賃金を支払って行えばよいことなのでは、と思います。

2.副業兼業をの運用をシンプルにする

労働時間は、1日につき8時間、週に40時間と労働基準法で決められており、それを超える場合は三六協定という届け出が労基署に必要なほか、割増賃金を払う必要があります。

それは、ひとりの人がひとつの会社で働くときの話だけではなく、ひとりの人がふたつ以上の会社で働くときも同様です。

なぜなら、労働時間が決められているのは、生身の労働者を守るためだからです。

ですから、今は、副業兼業している人は、ふたつの会社間でも情報のやり取りが必要になるなど、非常に煩雑な手順をふむことになっています。

結果として、定められたとおりにきちんとやっていないところが大多数となっているように見受けられます。

ルールをもっとシンプルにして副業兼業を推進しよう、というのが今回の経団連の意見です。

どうシンプルにするのかというと、以下のとおりです。
1)本人・本業先・副業先の三者間の合意は必要でないことにする
2)労働者と副業先との間の契約では、「管理モデル」を利用、本業先と合意した「副業先の労働時間の上限時間数」の範囲内で副業先における上限時間数等を合意すれば足りることにする
3)現行「副業・兼業の促進に関するガイドライン」わかりやすい解説にあるような、本業先における管理モデル利用に際し、副業先が一定条件を遵守することを条件としないことにする

つまりは、最初にそれぞれの会社でバランスをとって労働時間を決めたら、あとは各社がその内容を守ればいい、会社間で連携は不要にするということです。

これは、確かに一理あると思います。
副業兼業が当たり前に行なわれている現状で、煩雑なやり方を強いても、守るには無理があり、結果、ルールがないなか労働者が守られない状況になります。

それならば、多少強引にでもシンプルにして、守ることのできる仕組みにしたほうがよいのでは、と私も思います。

とはいえ、副業兼業である一定期間以上働くひとは、そのやり方で運用ができますが、短期間での勤務を繰り返す場合は、その調整もなかなかスムーズにはいきません。

タイミーやメルカリハロなどのスポットワーカーは、それぞれのプラットフォームでは上限規制があっても、複数のプラットフォームをかけもちすることで、上限なく働けてしまいます。

個々の労働時間をどう全体管理するかは、まだまだ不透明な部分が多くあります。

ではありますが、最初の一歩として、少しでもルールを守れるようにしていく今回の提案は、私はありなのではと思います。

皆さんは、このふたつの提案、どう思われますか?

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