社会保険「130万の壁」については誰もが、特に学生の親は知っておくべき〜年収の壁支援強化パッケージ
テレビのニュースでも大きく取り上げられている「年収の壁」問題。
この壁問題、実は大きくふたつの壁があります。
どちらも社会保険のややこしい仕組みが関係するので、社会保険に興味がなければなかなか腹落ちしにくい内容だと思います。
壁はふたつある
ざっくりいうと、ひとつは、「社会保険料をお給料から天引きされると損するから、社会保険に入らない働き方で年収をおさえたい」という人向けの、「その社会保険料が引かれるぶん、手当を出しますよ」というもの。
これが106万円の壁といわれるほうです。
もうひとつは、「年収130万円を超えると扶養を外れないといけないから、働き方をおさえたい」という人向けの、130万円を一時的に超えたぐらいでは扶養から抜けなくてもいいですよ、というもの。
これが130万円の壁です。
106万円の壁のほうは、手当を出すかどうかを決めるのは会社です(会社はそのぶん、国から助成金をもらえる場合もあります)から、自分がいくら手当が欲しいと思っても、どうにもなりません。
ですが、130万円のほうの壁は違います。
こちらは自分から働きかけることができる部分があります。
知っておいて損はない。
ここ2年くらいは常識にしておきたい内容です。
では、130万円の壁、どういうことかもっと見ていきましょう。
130万円の壁は自分からアピールできる
仕組みのイメージはこんな感じです。
健康保険の扶養というのは、いわば、働く会社員ひとりのお給料にたいしてかかる健康保険料は同じ、お値段すえおきで、家族ぶんはただで同じ健康保険に入れる制度です。
何人子どもがいても扶養に入れられますし、扶養にいれれば、保険料はひとりぶんすえおきのまま、子どもたちは医療費の7割〜8割を健康保険に負担してもらえます。
これが配偶者だと、年金制度のほうも優遇されます。
こちらも会社員のお給料から天引きされる厚生年金保険料はお値段すえおきで、配偶者は、自分で国民年金保険料を払うことなく、国民年金に入っていることになります。
そして、そのプラスかかっているぶんの健康保険や年金保険料は、社会ぜんたいでみることになっているのです。
お得な制度であることは間違いありません。
収入が低い場合はとくに、自分で自分のぶんの保険料を納めなくてもよく、安心して医療機関にかかかれるので、大事な制度といえます。
その大事な「扶養」が、自分の収入が130万円を超えると、それくらい収入があるなら自分で保険料払ってね、と利用できなくなるのが、今の制度。
これまで払わなくてよかったものを払うことになるのに、医療費面で受けられるサービスは変わらないのです。
病気でお仕事をら休まざるをえなかったときに傷病手当金というものが貰えるというメリットはあります。
ですがこれは「いざという時」の制度で、ひんぱんにつかうものではなく、それなら自分で入ろう、となるほどの魅力はないのが現実です。
それならばどうするか。
つい、扶養から外れないように収入をおさえよう、となるわけです。
いっぽう、健康保険側も、扶養になっている人がちゃんと決められた通りの収入以下で働いているかを気にします。
お得な制度だけに、当然のことです。
どうするかというと、扶養にいれるときに収入の証明を出させてチェックするのはもちろん、扶養に入っている間も、定期的に、だいたい年1回は収入のチェックを入れるのです。
そこで年収130万円超えていることがわかれば、扶養から抜けざるを得ないことになるわけです。
ですが、今回の130万の壁をなくそうという政策では、この年収確認のときに130万円を超えていたとしても、それが忙しくて人手が足りず残業してしまったため、などの一時的な収入増であることを会社か証明すれば、扶養から外れなくてもいいことにしてくれる(はずな)のです。
その証明とはこのようなもの。
厚生労働省があげているサンプルです。
「人手不足による労働時間延長」としっかりかかれています。
これについては、人手が足りないから、とシフトや残業が増えたりした従業員としてはしっかり利用したいもの。
会社のために労働時間が伸びたのに、収入が増えて扶養から外れざるを得なくなったのでは、悲しすぎるというものです。
ニュースではよく配偶者が取り上げられますが、この壁は、子どもも対象です。
例えば子どもがアルバイトでめちゃめちゃ忙しくて年収130万円を超えて稼ぎすぎた場合、本来は扶養から外れなければなりませんが、その働かせた会社にこの証明を出してもらうことで、扶養のままで留まれる、はずです。
健康保険は会社で作っている組合も多く、取り扱いの違いもあるため絶対とはいえませんが…
ですので、できればすべての人、特にアルバイトをがんがんしている子のいる親御さんは、この2年くらいはこういうお守りがある、ということを知っておき、いざとなれば活用できるようにしておくべきです。
注意点としては、これはあくまで健康保険の話です。
税金、親の税金が安くなる扶養控除の収入ラインや、子どもが自分で市区町村に税金を納めなくてはならなくなるラインは変わりません。
なので、健康保険は扶養に入れても、税金の扶養は別物と心得て、きちんと外しておく手続きが必要です。
それをおこたると、あとで追加徴収されるかもしれませんのでお気をつけて。