平均寿命・平均余命の変化を波平さんに見る~「令和5年版厚生労働白書 資料編」をよむ①
令和5年版厚生労働白書の資料編が公表されました。
厚生労働省のかかわる範囲、たとえば人口構造、平均寿命、世帯構成、所得、国民負担率などの国の基本データから、医療体制、労働関係、社会保険・社会福祉関係、人材育成などについて、調査の結果の数字が載っているものです。
ひろく読まれている本『ファクトフルネス』でも紹介されていた通り、私たちは放っておくと、脳のもつ機能や生き物としての本能の影響から、「思い込み」にとらわれます。
「世界がどんどん悪くなっている」というネガティブ本能、「世界の人口はひたすら増える」という直線本能、「目の前の数字がいちばん重要」という過大視本能、などなど。
そういった思い込みを打破しないと、物事を決めるときに間違った情報をもとに判断していることに気がつなかったり、しなくてもいい不安に囚われて苦しんだりしてしまうことになります。
思い込みを打破するためには、自分の目でありのままのデータをみるのもひとつの策です。
「厚生労働白書 資料編」は、紹介されている数字にもとづいた見解なども掲載されていないため、自分でデータを見ていくことが必要で、そういう意味ではお役立ちの資料です。
今日は「平均寿命/平均余命」について見ていきましょう。
平均寿命・平均余命とは、見たような言葉ですが、知り得る情報は全く別のものです。
平均寿命は、いま0歳の人が何歳まで生きられるか、です。
若くしてなくなる方もいれば長生きする人もいる、その平均が平均寿命です。
以下の表のうち、「0歳」の部分が「平均寿命」です。
昭和20年代、50歳から60歳だったのが、いまや80歳代。
いまおぎゃあと生まれた赤ちゃんの大多数が、その年令まで生きるだろう、ということです。
ずいぶん伸びていることがわかります。
この平均寿命の数字からはこんなことも考えられます。
たとえば、漫画「サザエさん」は「朝日新聞」朝刊で1951年から1974年まで連載されていました。
1951年の平均寿命は男性で約60歳。1974年で約70歳です。
サザエさんのお父さん、磯野波平さんの年齢は54歳という設定。
つまり、1951年の段階では平均寿命まであと6年、1974年であと16年ということです。
2021年の平均寿命は80歳。
平均寿命からの逆算で考えると、マイナス6歳で74歳、マイナス16歳で64歳となります。
54歳という年齢よりは、イメージに近いのではないでしょうか?
これだけ、日本の寿命は伸びてきているということです。
一方、「平均余命」は、すでに一定の年齢まで生きている人が、その後何年生きられるかということです。
一定の年齢まで生きられた、ということは、全年齢の平均である平均寿命よりも、もっと長生きする可能性があるわけです。
そこで、何歳まで生きられるかのより正確な平均を出すため、その一定の年齢以降の平均を出したのが「平均余命」となるわけです。
ライフプランで老後資金を考えるには、こちらの「平均余命」のほうが大事となります。
これも、日本は戦後から大きな伸びを見せています。
ただし、20歳・40歳の平均余命は20年前後伸びているのに対して、65歳は約10年、90歳は5年です。
長生きする人が多くなってはきているけれど、それはやはり平均寿命あたりまでが多いということもわかるわけです。
また、資料には国際比較も載っています。
日本は長寿国と言われていますが、この比較を見ると、平均寿命にはそこまでの差がないということがわかります。
日本の問題は、高齢化よりも少子化にあると言われますが、そこにもつながる数字です。
次回は、少子化についての資料も見てみましょう。