配偶者控除を受けるには本人の収入も大事
会社員の年末調整に「株を売った利益や退職金の収入は関係ない」と思っている方が多くいます。
たしかに、株を売って得たお金や退職金は、所得税でも「分離課税」という種類で、給与所得などの「総合課税」、合算した金額から所得税を求めるやり方とは異なり、単独で所得税が計算されます。
ですが、じつは、平成29年度(2017)の税制改正から、それらの収入は、配偶者控除が受けられるかの条件にも重要になっているのです。
1.なぜそれらの収入が重要か?
どうしてそれらの収入が重要になっているかというと、配偶者控除を受けられるかどうかの条件に「本人の収入が一定以下であること」というのが加わったからです。
2017年までは、配偶者控除を受けるための条件は、その配偶者の収入が一定以下であることだけで、その配偶者を扶養している本人の収入は条件ではありませんでした。
ですが、2017年の税制改正で、配偶者控除の上限があがったことにともない、本人の収入にも上限が設けられたのです。
つまりは、本人の年収が一定以下であれば、配偶者がある程度かせいでも税金はおさえられるけれども、本人の年収が一定以上であると、その配偶者は収入がなくても配偶者控除を受けられないというかたちになりました。
その一定以上とは、合計所得金額が1,000万円を超える場合、給与収入でいえば、1,220万円以上ある場合です。
ここで、「給与収入でいえば」という表現をつかったのは、実は、その収入が何であるかにより、所得の計算方法が違うからなのです。
給与所得とは、いろいろ引かれる前の総支給の金額から、「給与所得控除」という金額を差し引いてもとめます。
この「給与所得控除」は、その総支給額がいくらかによって幅があり、給与年収が
162.5万円までは65万円
からはじまって、上限は、給与年収が
1,000万円超のときの220万円
となります。
この1,000万円と、220万円を足したのが、さっきの1,220万円という数字です。
つまり、前の条件、合計所得金額が1,000万円、というときに、給与所得ではない他の所得がある場合は、そのうちの「所得」が入ってくる場合があるのです。
2.退職金の場合は?
では、退職金をもらって前の会社を退職し、つぎにはいった会社で年末調整を受ける場合、その退職金はどうなるのでしょうか。
退職金は、「退職所得」という所得税の種類になり、その「所得」は、また別の計算方法で決まります。
計算式は以下の通り。
(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 1 / 2 = 退職所得の金額。
肝心の「退職所得控除額」はいくらかというと、勤続年数で変わり、勤続年数が20年以下の場合は、40万円 × 勤続年数。
たとえば10年のときは400万円で、80万円に満たないとき、つまりは2年以下のときは80万円です。
勤続年数が20年以上のときは、800万円(40万円×20年)+70万円 × (勤続年数から20年を引いた年数)となります。
つまり、勤続年数20年までは1年あたり40万だったのが、70万とふくらむ訳で、長く働けば働くほど、「退職所得」、つまり税金がかかる分の退職金は減っていきます。
退職金で1000万円もらったとしても、勤続年数が25年であれば、800万円+70万円×5年で、1150万円。
1000万円から1150万円をひくとマイナスになりますから、税金はかからない、ということになります。
問題なのは、ここで、計算の結果「退職所得」が生じた場合です。
その場合、その「退職所得」は、上で説明した、配偶者控除を受けられるかどうかの条件である本人の「合計所得」に合算しないといけないのです。
ついつい関係ないと思いがちな退職金、気をつけたいところです。
ですが税金がかかるほどにたっぷりもらえたら、嬉しいことではありますね。