【雑感】裁量労働制は「見えない資産」の過小評価?
2023年のゴールデンウイーク、裁量労働制についてまとめながらなんとなくもやっと感じていたことがあった。
もやっとしていることを片付けずにそのままにしていると、引き寄せの法則が働く気がする。
その引き寄せのおかげか、ちょうど読んでいた本でもやもやの正体がつかめた。
それは、「「見えない資産」に配慮のない裁量労働制はNG」ということ。
ヒントになった本は、梅田悟司『きみの人生に作戦名を』。
1.「見えない資産」とは?
著者の梅田さんは、コーヒーのGEORGIA「世界は誰かの仕事でできている」などのコピーで知られる、コピーライター・作家だ。
その梅田さんが、この本で、パブロ・ピカソのエピソードを紹介していた。
街でいきあったファンに「ここに絵を描いてほしい」と小さな紙を渡されたピカソが、30秒足らずで絵を描いたあと、高額な価格を請求する。
ファンは驚いて「30秒足らずなのに」というが、ピカソは「30年+30秒ですから」と答える。
というものです。
それをふまえ、梅田さんはこう言われている。
アウトプットの質が、作業時間や拘束時間に比例しない仕事はたしかにある。
それならば、作業時間や拘束時間を減らすことで報酬を減らしたい」という方向に考えがいっているのが、裁量労働制の良くない使い方ではないか。
梅田さんのお仕事であるコピーライターのお仕事は、まさに、以下のとおり、専門業務型裁量労働制の19業種のひとつになっている。
こういった業務は、たしかに労働基準法第38条の3の1にあるとおり、「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なもの」である。
それは、労働者に膨大な下地があるからこそその裁量にゆだねる必要があるのであるが、その「下地」、「見えない資産」への配慮があってこそのことなのではないか。
つまり、これらの専門業務、そしてもうひとつの「企画業務」でさだめられている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」をおこなうためには、日々の自己研鑽が必要なのである。
「アウトプットの質が作業時間や拘束時間に比例しない」というのは、実際にそのアウトプットをしている時間こそ短いかもしれないが、その氷山の一角の下には、膨大な知識と経験が沈んでいるからこそのことだ。
その海面下の氷山、見えない資産にきちんと価値をみとめず、「実作業時間が少ないなら報酬を少なくできる」という運用をするのは、裁量労働制の誤った解釈だと思う。
裁量労働制を運用するのであれば、その下地となる見えない資産を養う時間も十分にとれるよう、配慮をしなければいけないのだと思う。
2.今後の方向性
とはいえ、その「見えない資産」も、これまで会社が仕事を与えてお給料を払って養ってきたからこそのものだ、という考え方もあると思う。
それにも一理ある。
だが、昔こそ終身雇用でそういう社員の育て方もポピュラーだったかもしれないが、今はそういう時代ではない。
となると、こういった知識と経験、「見えない資産」がものをいう仕事は、フリーランスに任せてそれ相応の報酬を払う方向とし、運用によって薬にも毒にもなる裁量労働制は、なくしていく方向のほうが現実的なのではと思う。
労働基準法じたい、昭和22年のもので、今の働き方や世の中とはだいぶそぐわない点が多くある。
厚生労働省の委員会では、ぜひこのあたりも検討をすすめてほしいし、「人的資本経営」がさけばれる民間企業側でも、労働時間を買い叩くような使い方は見直されていくことが望ましいと思う。
アイキャッチは画像生成AIで作成しました。
プロンプト:裁量労働制で山積みの仕事に頭を抱える人