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BPOについてはもう少し中長期的視点が必要では?
パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社が、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)導入の計画・検討・選考に関わる1,268名の経営層または管理職を対象に、「BPOに関する実態調査」を実施し、8割が効果を実感しているという結果を公表しました。
ただし、この内容は良い面にのみスポットが当たっているように感じます。
もう少し中長期的視点が必要なのではと個人的には思うため、調査結果を紹介しつつ、なぜそう思うのかを述べたいと思います。
まず、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは何かの説明から。
野村総研では、
「企業活動における業務プロセスの一部を一括して専門業者に外部委託することです。
対象の業務プロセスについて企画・設計から実施までを外部委託するため、アウトソーシングの中でも、外部委託先の自由度が高いことが特徴です。
自社よりも優れた専門性を有する外部企業によるBPOを活用することで、企業は、経営資源のコア業務への集中やコスト削減、固定費の変動費化のみならず、より優れた業務品質を実現し、顧客への提供価値を高めることが可能となります」
と定義しています。
実際に、BPOを導入している会社は、調査対象の2割強。
一部のみでもアウトソーシングしている会社も含めると、6割強の会社が何らかのアウトソーシングをしているということになります。
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BPOを導入した287社について、導入の目的と得られた効果について調査した結果は、以下の通り。
どちらも、野村総研がBPOで定義した
「経営戦略/成長戦略の一環として経営資源をコア業務へ集中させるため」
「固定費を抑制した流動的な経営/事業活動を行うため」
が1位、2位をしめており、まさに想定通りの効果を出していることがわかります。
また、8割以上が高い満足度を示しているという結果も示されています。
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この調査では、このメリットのみが示されているため、BPOが素晴らしい解決策であるようにみえます。
ですが、肝心なのは、BPOはあくまで「手段」であることだと思います。
どの業務をBPOするかによって、会社への影響は大きく変わってきます。
たとえば、人事オペレーション業務、総務業務、経理業務などは、BPOの対象とされることの多い業務です。
これらがBPO化されることは、会社にマイナスの影響もあります。
どんな影響かというと、本来であれば、オペレーション業務も加味して検討すべきことが、オペレーション業務を外部に出しているために、課題として見えなくなることです。
たとえば、社会保険業務を切り出した会社が、健康経営を検討している場合、傷病手当金の申請件数や申請内容を検討の材料とすることは、よほど業務全体に精通していないと視野に入ってこないことになります。
現場の労災申請にしても、然りです。
今回の調査でも、BPO化していない理由としてもっとも多かったのが「外部委託する業務範囲の特定・切り分けが難しい」こと。
そのあたりに悩んでいる会社が多いのではと思います。
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業務を切り出しても、件数などは結果の報告をもらえばよい、という考え方もあります。
ですが、該当業務が会社を離れてから時が経つと、そもそも会社の担当者の視野に入ってこなくなり、見えない業務化してしまう危険性は大いにあります。
私はそんな実態を何社も見てきました。
良い効果、経営資源をコア業務へ集中させたり、固定費を抑制したりの効果は、短期的には大きいでしょう。
ですが、長期的には、じわじわと、切り出した業務が会社のなかで見えない業務化するリスクもはらんでいるのです。
見えない業務化したあとに、BPO先が値上げを持ち出してきた場合のことも考えておくべきです。
値上げを飲むのは難しいからと、自社で行う内製化に戻したいと思っても、戻すのには、担当者の育成などのパワーがかなりかかることを覚悟しておく必要があります。
だからといって、BPOを否定したいわけではありません。
BPOを検討するなら、「どの業務を対象にするのか」が大事であり、そうした長期的な視点やデメリットも踏まえる必要がある、ということです。
とはいえ、調査主体の調査意図を考えると、そこまで求めるのは違うでしょう。
ですが、実際にBPOを検討するときは、バランスのよい見方が必要となることは間違いないありません。