純粋な「ギグワーカー」はどのくらいいるのか?~日経新聞ギグワーカーの待遇改善記事より
2024年8月15日、日経新聞の一面をギグワーカーについての記事が飾りました。有料記事です。
内容は、ギグワーカーにも最低賃金の適用や有給休暇等の対象とするなどして、待遇を改善する方向で厚生労働省が動いているというものです。
ギグは、ジャズ・ロックミュージシャンなどが一晩限りの契約でライブ演奏に参加することを指す言葉ですが、そこから、ギグワーカー=デジタルプラットフォームを介して単発の仕事をする人、と使われるようになりました。
ですが、そもそも、ギグワークのみを仕事としているギグワーカーは、どのくらいいるのでしょうか?
また、当たり前のように、労働者のように扱うことを「改善」としてよいのでしょうか。
フリーランス側の資料から、探ってみようと思います。
プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の資料をみると
厚生労働省の労働基準関係法制研究会第8回では、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が以下のような資料を提供しています。
フリーランス側の資料なので、「ギグワーカー」と言われているほうの本音が見える資料となります。
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001268133.pdf
まずは、大前提として、ギグワーカー=フリーランス=事業者、であることが確認されます。
そして、実際のギグワーカー、たとえばUberの配達員がどの程度いるのかを試算しています。
試算結果では、フードデリバリー配達員を主な収入源とする人は、フリーランス全体の1.5-2.3%と少数規模となっています。
週に10時間未満の勤務の人が4割、20時間未満が過半数を占め(フリーランス白書2022)、副業的な働き方のほうが多数ということがわかります。
ということは、生活費を保証するための「最低賃金」、働く上での疲労を回復するための「年次有給休暇」、どちらも待遇としてギグワーカーという働き方に合致するのか?という問題がでてきます。
ギグワーカーを「労働者」のように扱うと問題がある?
ギグワーク100%の人であれば、最低賃金の保障も、年次有給休暇も必要かもしれません。
ですが、ギグワークという働き方が副業的なものがメインだとすれば、労働者のように扱うことで、新たな問題が出てきます。
本業で年次有給休暇を使っている日に、ギグワークでも年次有給休暇を取得するのは二重にならないか?
年次有給休暇日数を算出するのに、労働時間を本業を通算すべきか?
労働時間を通算するとしたら、合算した労働時間数を制限すべきか?
などなど。
ギグワークが個人事業主で副業的なものであれば、労働時間を気にせず、稼ぎたいときに稼ぐ方法として使っている人もいるでしょう。
そもそも、同じデジタルプラットフォームを介した働き方ならば、タイミーやメルカリハロを介せば雇用される労働者も選べるのです。
そこをあえて個人事業主を選択しているのがギグワーカーとすれば、そこを制限することに対しては慎重になるべきと思います。
偽装請負、偽装フリーランスを取り締まることは大切ですが、ギグワーカー全体を問題視して過剰な保護や規制をすることは問題です。
実態をしっかり把握してから、議論が進められることを願っています。
ちなみに、「ギグ」の言葉の由来は、こんな説もあるそうです。