[見た映画004]スーパーノヴァ

物語の展開の速度に、これしかないという濃さの描写が丁寧に積み上げられていく。
すべての展開にセリフに演技に描写に余剰はなく、そこには本質だけがある。
それを追ううちに、気がつけば、いつしか自分も「当事者」となっている。
究極の選択をせまられ、納得できないことも、のみこまざるを得なくなる。
観終わった後、静かに胸がはりさけていく気がした。

https://gaga.ne.jp/supernova/

[こんな人におすすめ]
・「お互いに相手が最高の贈り物」という、性別、恋、愛、など既存の言葉やカテゴリにはおさまりきらない、大きな感情を感じたい人
・ラベリングできない感情を味わいたい人
・静かに心にしみいってくる物語が好きな人
・人と人とのつながりを感じたい人
・ピアノが流れる雰囲気の映画が好きな人
・イギリスの湖水地方の風景や田園風景を愛する人

[感想](ネタバラシ注意)
エルガー「愛の挨拶」の演奏が、物語の結末を知らせるというエンディング。
これは、サム役のコリン・ファース自身が特訓を経ての実際の演奏だそう。
サムの心情そのままで、胸をうつ。

観終わった後、納得はできていないのに、もうこれしかないんだな、これが彼らにとって最大の思いの証なんだな、とはのみこんでいて、エンドロールがじわじわと涙でにじんだ。

タスカーの「君の中に私ではない私の記憶を残したくない」という言葉が、最大の愛の言葉だと思う。
これを言われたら、飲まざるをえない。

彼の肌も髪も声も文字もすべてが年月を経ても愛おしい。
それは、彼が彼だから。
サムは、「耐えられる」と言い放った時、彼がどんなになっても最期まで彼は彼だし愛していけると、
ひとかけらも疑っていなかっただろう。
けれど、タスカーのその言葉に、
「彼が彼でなくなることがあるかもしれないのだ」と、わからされてしまう。
そして、愛する彼が、それを恐れている。
これは、飲まざるを得ないではないか。

悲しい・哀しいなどの既存の感情にはおさまりきれない、
「これでよかった」と「これしかなかったのか」という矛盾した思いが綺麗に溶けあう、不思議な鑑賞後感。

もう一度、じっくりみたい映画。

[好きなセリフ・場面]
・「世界は驚異に満ちている、ただ私達が無関心なだけ」

・「重荷になりたくない」「独りで行く、誰の手も借りずに」
サムへ余計な嫌疑をかけさせないということも考えての言葉だったのでは…

・湖水地方での天体観測で、サムは映っているのに見つけられず、タッカーがのぞいて「なんだあるじゃないか」というシーン、象徴的。

・サムの姉が実家を手放す話をするシーン。
「失うのがつらいということは、それだけ大切だったということだ」

・歩くタッカーをサムが支えているようでいて、支えられているように見えるところ

・決心を互いに確認した後のベッドのなかで求め合う切ない動き

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