男女賃金差異情報を集計して公表してどうするか~厚労省が好事例紹介
人的資本情報の開示が、この2023年3月決算以降、いよいよ大手企業からはじまります。
ですがそのスタートよりもいち早く、企業の判断で独自に公表をはじめている会社もあります。
厚生労働省はその人的資本情報のうち、男女間の賃金差異データの公表について、好事例として、株式会社ペイロールの例をとりあげました。
https://www.mhlw.go.jp/content/11910000/001047246.pdf
このレポートでは、
「公表することは人的資本を高めるための手段であって目的ではない」
という、この公表の大きな課題のひとつであることが、実際に公表した立場から示されています。
人的資本情報の開示がはじまるとどうしても、その会社に男女の賃金差異がどれだけあるかということに注目が集まる気がします。
ですが大事なのは、いまどれだけその差があるかということではなく、その差がなぜあるのか、そしてどうすれば解消できるのかを考えることなのです。
この好事例の会社では、男女の賃金差異を産出したところ、正規雇用労働者では80.2%、非正規雇用労働者では90.1%と、男性の賃金のほうが女性と比べて若干高いことがわかりました。
その差異がなぜあるのか、いくつかの仮説をたて検証してみたところ、管理職の男女比が大きく影響していそうだということをつかみました。
管理職の女性比率は35%、女性労働者における女性管理職の比率は10%。
ですが、管理職の男性比率は65%、男性労働者における男性管理職は25%だったとのこと。
事業内容は男女の違いに関わりがなく、産休や育休をとっても評価に影響することはない評価制度です。
それでも女性管理職の比率が低いのは、そもそも管理職になりたいと思う女性が少ないからではないか…ということで、この会社では、管理職候補をみつけるためのタレントレビューやキャリア開発プランに、よりいっそう力をそそぐことにしたそうです。
何かアクションをしたあとは、それが効果的だったかの振り返りが肝心です。
その仮説があたっているかは、その後実際に男女の賃金差異が縮まったかの確認が必要ですが、人的資本情報開示により、数字の推移はいやでもわかります。
思ったほど数字が変わらない場合は別の仮説を作ってためすということになりますし、効果的なら進める、ということをする機会が、人的資本情報開示によってこんなふうに利用できるんだ、ということが、この会社の試みをみるとよくわかります。
実際の開示義務がはじまると、どんな「好事例」があふれるのか。
それも、良い刺激になりそうです。